近い将来、さまざまな製品の購買・補充・ケアが自動化される。その結果、必然的に、マーケティングの対象は消費者だけではなくなると筆者は語る。


 マーケティングの大部分における前提は、「企業から顧客にメッセージを送り、購入・消費行動に影響を与えよう」というものだ。

 実際、世界最大級の広告主は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ネスレ、ユニリーバといった、低関与型(消費者の関心・関与が薄い)の日用消費財を自社ブランドで販売する企業である。その何百億ドルにもおよぶ広告が目指すのは、消費者に自社の洗剤、スープ、コーヒー、ヨーグルト、ペットフードを次回の買い物で手に取るようリマインドすることだ。

 だが数年以内に、このマーケティング・広告・買い物のモデルは時代遅れになるだろう。陳腐化の始まりは、すでにアマゾンのダッシュボタンに歴然として見られる。この新機能を使えば、定期的な購入がよりシンプルに、そしていっそうルーティン的になる。

 アマゾンのような小売業者は、近い将来、顧客の習慣を十分に把握して、200品目ほどの定期消費物を配達(またはドローン空輸)できるほどになるだろう。配達のタイミングは、企業のアルゴリズムが割り出した補充時期に基づく。

 その後まもなくして、家庭のスマートクローゼットやスマート冷蔵庫が、小売業者のアルゴリズムに直接発注するようになることが考えられる。すると消費者は、買い物リストをつくることも、買うべき商品を覚えておくことも不要となり、ルーティン的な買い物に出向く手間が省ける。消費財はライフライン、すなわち電気や水道と同じように家庭に届けられるわけだ。多くの製品はボット(タスクを自動で実行するソフトウェア・アプリケーション)が購入し、顧客の作業は「消費」のみになる。

 では、企業のマシンと顧客のマシンがやり取りする世界では、マーケティングはどんな様相を呈するだろうか。