在日中国人が日中関係悪化でも日本に寄せ続ける想い

要約者レビュー

 現在日本には、約70万人もの中国人が滞在し、中国からの訪日観光客も増えている。繁華街や電車の中では前よりも頻繁に中国語も聞こえるようになり、身近な存在となってきているのはまちがいない。

 しかしながら、実際に中国人と交流を持っている日本人はどのくらいいるだろうか。両者の交流はさほどないのが現状だ。日中関係も2012年の尖閣諸島の領有権をめぐって、「正常化以来、最悪」と言われている。

在日中国人が日中関係悪化でも日本に寄せ続ける想い『在日中国人33人のそれでも私たちが日本を好きな理由』
趙 海成/小林さゆり (訳)
272ページ
CCCメディアハウス
1800円(税別)

 日中関係が悪い理由のひとつは、お互いのことをよく知らないからである。長く日本に滞在し現在はフリーライターとして活躍している著者は、在日中国人のプラスイメージにつながることを願い、本書『在日中国人33人のそれでも私たちが日本を好きな理由』を出版したという。また、日本に対して固定観念を抱きつづけている中国人にとっても、本書は新しい見方を提供してくれるだろう。

 日本人は「勤勉である」、「信頼できる」、「礼儀を心得ている」など世界でも賞賛されることが多いが、実はこういった作法は中国の『論語』などがもとになっているところも大きい。

 長い歴史を通して、日本と中国は交流をつづけてきた。本書を読むことで、日本のもつ魅力をあらためて発見するとともに、私たちがあまり知らない日本文化のルーツの一端が見えてくることだろう。(山下あすみ)

本書の要点

・日本に長く滞在できる在日中国人は不屈の精神、旺盛なチャレンジ精神、向上心、そしてマイペースな楽観主義を備えている。
・日本の文化や生活には、中国にはないすぐれた点や異なる点が多々ある。中国人のなかには、仕事を通してそれらを中国の国民に伝えようとしている人たちもいる。
・日中関係を改善するために、日中の架け橋になろうと日々奮闘している人々は、政治経済や文化交流を通じて、双方のコミュニケーションをうながしている。