前原誠司外相が、法律違反である外国人からの政治献金を5年間、合計25万円受け取ったことで辞任した。献金者は前原氏が子どもの頃、世話になった近所の方だという。これは国益を損ねるような話ではない。受け取ったお金を献金者に返金すればいいだけだ。それなのに前原氏が辞任したのは、些細なことにヒステリックになる国民に対する「不信感」があるからだ(前連載第65回を参照のこと)。
今回は、英国と日本の財政改革を、政治と国民の「信頼」に焦点を当てて比較する。
英国の財政改革
――英国債は最高格付けを維持した
ディーヴィッド・キャメロン政権は、ほとんどの省庁の予算の4分の1を削る歳出削減を盛り込んだ財政再建策を提出した。同時に付加価値税(VAT)の増税にも踏み切った。
また、キャメロン政権は「大きな社会(Big Society)」という国家構想を打ち出した。財政再建で削減される学校、医療、警察、福祉などの国家の役割を、NGOなどの市民が自発的に引き受けることで「大きな社会」を創造するという構想だ。これには野党・労働党などから厳しい批判があるが、キャメロン首相は臆することなく、「われわれは政府の『文化』を変え、一部の強力な既得権益に立ち向かう」と訴えている。
これは、トニー・ブレア首相が在任時に「政権は国の『文化』にならねばならない」と発言したことと似ている(前連載第25回を参照のこと)。キャメロン首相の財政再建への強い姿勢は、米格付け会社S&Pによる英国債の最高格付け維持につながったという指摘もある。