現場社員からすれば「いくら1件当たりの売上や利益が多くたって、社長は評価してくれないんでしょう?だったら小粒の仕事をたくさんとったほうが、自分も楽だからそれでいいよ」となってしまうのです。

 その結果、新規獲得の件数だけは増えて社長は安心します。しかし、売上や利益はそう変わりません。

 あるいは「クライアントの数ばかり増えて、現場や管理部門の手間が余計に増え、コストがかかり、利益率は逆に下がる」ということが起こるかもしれません。

「どのような資料を作るか」は、みなさんが思っているよりはるかに重要なのです。

「マンネリ化している会社だから、マンネリ化した資料」「複雑怪奇な職場だから、複雑怪奇な資料」が生まれるのではありません。「マンネリ化した資料だから、会社もマンネリ化する」「複雑怪奇な資料だから、複雑怪奇な職場になる」のです。

 経理の重要な役割は、経営者と現場との「中間・中立」の立場に立つこと。そして客観的に会社の数字や業務状況などを観察し、作られている会議資料がその時々の会社にとって有益かどうかを確認、指摘することなのです。

 このケースであれば、「手間は同じなので件数だけでなく、売上金額も一緒に載せてはどうか」ということに気づければ、少なくとも前述のような現象は防げます。

赤字会社は、「資料」が起点となり、人が動く

 本来「資料」とは、現場の動きや成果を数値化、文章化したものです。しかし赤字会社では、「資料」が起点となって人間の心理に働き、社員の行動のほうが資料に寄っていってしまう、という現象が起きるのです。

 そうなると、社長(会社)にとって都合のいい資料が優先して作成されるようになり、会社の生産性はどんどん落ちていきます。