収支が赤字であれば、重点エリアではないブラジル事業を持ち続ける意味はない。同社首脳の一人が「なぜわれわれはブラジル事業を持っているのだろうね」と首をかしげるほどだ。

焦ってブラジルで買収

 キリンは国内ビール業界のガリバーと呼ばれてきた。業界の盟主であるが故、常に競合よりも先手を打ち、日本勢の中では積極的に海外へ大型投資をしてきた。

 しかし、海外勢の動きだしはもっと早かった。キリンが海外で買収を始めた09年ごろには既に海外のビール市場で大型再編が一段落しており、買収案件が少なかった。キリンは焦るようにスキンカリオールを買収した。

 ブラジルに手を出したことで成長戦略はぼやけ、「どんな姿になりたいか」という会社の未来図が描けずにいた。だが、14年ごろからブラジル事業が不振に陥ったことが、皮肉にも、アジアという目指すべき道を示すことになった。

 アジア戦略では、今春に入札が予定されているベトナム大手のサイゴンビール・アルコール飲料総公社(サベコ)の獲得の可否や、株式の48%を持つフィリピンのサンミゲルビールとの関係性が重要になる。

 サベコやサンミゲルを傘下に収められたとしても、マネジメントに失敗すれば巨額減損につながりかねない。アジアでの投資に失敗すれば、キリンの海外事業に未来はない。ブラジルでの教訓を生かせるのか──。磯崎体制に課される使命は重い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)