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大震災、中東政情不安で深刻化する原油問題
今こそ日本が考えるべき新しいエネルギー政策
――十市勉・日本エネルギー経済研究所専務理事インタビュー

2011年3月24日
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東日本大震災の発生に伴い、被災地のガソリンや灯油などの燃料不足が深刻化し、さらに首都圏を中心とした地域でもガソリン買い占めの動きが続いている。経済産業省は民間石油備蓄量を引き下げ、計1050万キロリットルを市場に放出、燃料不足解消に向かっているが、その背景で事態をより深刻化させる恐れがあるのがリビアをはじめとした中東の情勢不安だ。

米英仏を中心とする多国籍軍が3月20日夜、リビアのカダフィ政権への攻撃を開始。リビア情勢は当面混乱が予想される上、シリア、イエメンなどの周辺国でも情勢は厳しさを増している。

では、実際に激甚災害となった東日本大震災と中東情勢は、今後の原油価格にどのような影響を与えるのだろうか。大震災発生前や中東情勢がより深刻化する前から進んでいた原油価格高騰の背景、今後のエネルギー戦略も交えて、十市勉・日本エネルギー経済研究所専務理事に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

被災地、首都圏で懸念されるガソリン不足
改善・解消に向かうのはいつか

――東日本大震災の影響により、被災地などではガソリン、灯油等の燃料不足が深刻化している。経済産業省が石油元売会社に石油備蓄の放出を指示したが、これによって不足は解消できるのか。

といち・つとむ/日本エネルギー経済研究所 専務理事。首席研究員、戦略研究グループ担任 兼 国際連携担当

 現在、地震と津波のために停止していた太平洋側の製油所3箇所が復旧し、さらに影響を受けていない西日本でも増産が行われていることで、合わせて震災前の精製能力の日量390万バレルまで回復がなされている。さらに今回の事態を受けて経産省が70日の民間備蓄義務日数を計25日分引き下げて石油製品の放出が行われていることからも、もはや日本全体では量的な不足はない。

 被災地では配送ルートが遮断され、また首都圏などでは先行き不安から買い急ぎが起き、供給不足的な事態が生じたが、道路も復旧に向かうなかで配送や油槽所(石油製品を一時的に貯蔵し、タンクローリーに詰め込む設備を持つ施設)も回復しつつある。

 もちろん被災地の石油不足の解消は、その土地ごとの道路の復旧具合に左右される部分がある。しかし、上記の事情からも首都圏をはじめとした多くの地域では、今週末から石油製品の不足は改善・解消に向かうだろう。したがって、都心において不足で手に入らない、給油のために長蛇の列ができるといった事態が解消するのはもはや時間の問題だ。

 また、我々の日本エネルギー経済研究所の石油情報センターが調査したところによると、震災が起きたことに伴う石油元売各社によるガソリンなどの価格上昇は起きていない。この非常事態のなかで、石油元売各社には石油の安定供給を行うという社会的な責任があることからも、“便乗値上げ”のような動きはない。ただ懸念すべきは、不安定化するリビアなどの中東情勢だ。これらの問題は、時間差はあるとはいえ、原油市場に影響を与え、価格を上昇させる可能性がある。

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