Photo by Hidekazu Izumi

「無印らしい商品とは何なのか」──。およそ3年前、無印良品を展開する良品計画で婦人服の商品開発を担当する田中俊輔は悩んでいた。

 2000年入社の田中は7年間の店舗勤務を経て、07年から衣服・雑貨部へ異動。12年9月から婦人服担当になった。

 衣服やかばん、靴などの雑貨部門は、全体の売上高の30%を超す無印の中核事業だ。中でも、婦人服の売上高は紳士服のおよそ3倍と大きく、“無印の象徴”とされるカテゴリーの一つである。

 田中がマネージャーに就任したころ、その婦人服カテゴリーにある異変が起きていた。無印が衣服販売を始めた1981年からの基幹商品で、販売ボリュームの大きいデニムパンツが低調になっていたのだ。

 すかさず田中は調査に乗り出す。消費者への直接のマーケットリサーチも敢行し、デニムパンツの問題点を洗い出した。その結果、デニム製品の商品開発チームのメンバーが考える“無印らしさ”と、消費者が求めるものの間に乖離があることが分かった。

消費者の役に立つ物が
“無印らしい”商品

 われわれは日常的に「無印らしい」「無印っぽい」という言葉を普通の形容詞のように使用している。だが、この「らしさ」を的確な表現で説明するのは難しい。

 12年当時、デニムパンツの商品開発チームは、無印らしいデニムパンツのシルエットは「10代でも60代でも着られる、細過ぎず太過ぎない、いいあんばいの太さのもの」(田中)だと認識していた。つまり、誰でも着られる普遍的なものと定義していたのだ。

 だが、消費者が無印のデニムパンツに求めるものは違った。年を取れば体形が変化し、似合う服や着られる形は変わる。誰にでも似合う魔法のような服はない。当時の商品開発チームが無印製品の普遍性にとらわれるあまり、逆にターゲットがはっきりしない「中途半端な商品になっていた」(田中)のだ。