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日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?
【第9回】 2017年2月20日
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村上尚己

「日銀=手詰まり」論は誤り。注目すべき2政策とは?
メディアが報じない「マイナス金利」以降の金融政策

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マイナス金利の導入以降、日本銀行の金融政策は手詰まりになったという通説がそこかしこで見られるようになった。しかし、日本の経済メディアが十分に報じていないだけで、実は日銀は新たな手を打ちはじめている。外資系金融マーケット・ストラテジスト村上尚己氏の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』から一部をご紹介しよう。

中央銀行の仕事は「コミュニケーション」である

以前の連載で見たように、マネーの価値は中央銀行・政府が打ち出す「政策」と、それに対する市場の「思惑」とのなかで決まってくる。その意味で、中央銀行・政府には市場にわかりやすくメッセージを伝えていく工夫が求められる。

 「中央銀行と市場とのコミュニケーション」の代表格が、インフレ目標(Inflation Targeting)である。これは「中央銀行は一定のインフレ率を達成するまで金融緩和を続ける」ということを市場に確約する、一種のコミットメントである。インフレ目標があることで、投資家は明確な基準を持ちながら、安心して取引を進めていくことができる。

一方、こうしたコミュニケーションがうまくいかないと、政策と市場のベクトルが合わないこともある。2016年の夏頃までの日本でも、このチグハグ状態が続いており、その結果として円高・株安が長引いていたというのが実情だ(幸運にもその風向きはトランプ当選により大きく変わったが…)。

たとえば、日銀は2015年12月に「償還期限の長い国債の購入量を増やす」という内容の発表を行っている。これを実施すれば、当然、20年物、30年物など、超長期の国債金利は一段と低下する。つまりこれは、事実上の利下げ策であり、金融緩和的な効果を持つアクションだったわけだ。

しかしどういうわけか、日銀はこの措置を「金融緩和」と表現しなかった。そのため、市場関係者は日銀の真意を測りかね、市場内にしかるべきリアクションが起きることもなかった。これは市場との対話の典型的な失敗例であり、2016年前半の日銀のコミュニケーションミスの発端だったと言える。そこで今回は、その失敗の典型としての「マイナス金利」について見ていくことにしよう。

[通説]「マイナス金利の大失敗。日銀・政府はもう手詰まり」

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村上尚己(むらかみ・なおき)

アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト
1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。
第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(原田泰・片岡剛士・吉松崇[編著]、中央経済社)がある。また、東洋経済オンラインにて「インフレが日本を救う」を連載中。


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