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日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?
【第4回】 2017年2月6日
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村上尚己

トランプ「円安批判」に戦慄する
日本人の「歴史的トラウマ」とは?
「円高シンドローム患者」の過剰反応に踊らされてはならない

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トランプ米大統領が日本の為替政策を「円安誘導」と批判したことが話題になった。メディアに踊らされないためには、日本のアナリストやメディアに「感染」している「円高シンドローム」という病の存在について知っておく必要がある。「トランプ相場」の到来を的中させ、注目の最新刊『日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか?』を上梓したた外資系金融マーケット・ストラテジストの村上尚己氏は、どう考えているのか?  同書から一部をご紹介しよう。

根強く残る「円高トラウマ」

1月31日、トランプ米大統領が日本の為替政策について「円安誘導だ」と批判的に語ったことがニュースになっている。こういうときの日本の経済メディアの過剰反応ぶりには本当に驚かされるが、前回の連載でも見たとおり、国内メディアは以前からずっと「トランプが円高を招く」という主張を既定路線としている。つまり、実を言うと、これはいまにはじまったことではないのだ。これらのニュースに惑わされないためにも、今回は以下の通説について検討してみることにしよう。

[通説] 「貿易赤字を問題視するトランプは円安を許さない」
【真相】 否。過去の円高は日米の「共犯」。トラウマを捨てよ。

ほとんどの日本の為替アナリスト達が、米大統領選の前後に「円高予想」をして「壊滅的な大外し」をしたのは、一つにはBrexitに学ばなかったからであり、一つには量で価値が決まるマネーの本質を理解していないからである。が、今回はもう一つ、より根本的な理由を示しておくことにしよう。これは単純に彼らの知識不足というよりも、心理的なトラウマに由来するものである。

かつて、1990年代前半までは、ドル円の動きは米国の政治情勢や保護主義の高まりに大きく左右されていた。当時、日米間にはいわゆる貿易摩擦という通商上の問題が持ち上がっていたが、これに対して米国政府は、自国の意向を色濃く反映した通貨政策をとってきたため、日本は長期にわたって円高に苦しむことになった。

このときに日本のマーケット関係者に植えつけられた円高への過剰な恐怖心を、ロナルド・マッキノンら著名な経済学者は、円高シンドローム(症候群)と名づけている。これは、1990年代後半に経済論壇や金融市場で最も注目されたテーマの一つだが、マッキノンらが説得的に論じているように、政治問題へと発展した当時の通商問題が、日本人に円高へのトラウマ的恐れを刻みつけたのはたしかである。

ドル円相場の推移(1970-)

象徴的なのは、1ドル80円まで大きく円高が進んだ1995年春先だろう。当時は、日本で毎月発表される貿易収支が為替レートを大きく左右していた。本来であれば、貿易収支・経常収支が為替レートに及ぼす影響はきわめて微小である。しかし、日本の貿易黒字拡大を米国政府が容認しない状況があったため、「日本の貿易黒字が膨らんでいれば、米国がドル安・円高を政治的に強要する」との思惑が当時の金融市場を支配していた。実際、日本の貿易収支の黒字額がその月に増えていれば、為替相場ではますます円高が進んでいくような状況だったのである。

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村上尚己(むらかみ・なおき)

アライアンス・バーンスタイン株式会社 マーケット・ストラテジスト
1971年生まれ、仙台市で育つ。1994年、東京大学経済学部を卒業後、第一生命保険に入社。その後、日本経済研究センターに出向し、エコノミストとしてのキャリアを歩みはじめる。
第一生命経済研究所、BNPパリバ証券を経て、2003年よりゴールドマン・サックス証券シニア・エコノミスト。2008年よりマネックス証券チーフ・エコノミストとして活躍したのち、2014年より現職。独自の計量モデルを駆使した経済予測分析に基づき、投資家の視点で財政金融政策・金融市場の分析を行っている。
著書に『日本人はなぜ貧乏になったか?』(KADOKAWA)、『「円安大転換」後の日本経済』(光文社新書)などがあるほか、共著に『アベノミクスは進化する―金融岩石理論を問う』(原田泰・片岡剛士・吉松崇[編著]、中央経済社)がある。また、東洋経済オンラインにて「インフレが日本を救う」を連載中。


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