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急増する融資要請の裏で
銀行に燻る不良債権化リスク

週刊ダイヤモンド編集部
2011年4月1日
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 「先行きに対する企業の不安心理が急速に高まっている」

 ある大手銀行の取締役は、未曾有の震災に見舞われた日本企業の思考が、リーマンショック時のそれと似てきたとの懸念を抱いている。中小から大手まで企業の融資要請が激増しているのだ。1年以上にわたって融資額が減少してきた銀行業界にとっては、まさに異例の事態だ。

 日本銀行のヒアリング調査などによると、大手企業の3メガバンクへの融資要請は地震のあった3月11日以降、合計で約2兆6000億円にまでふくらんでいる。そのうち、約1兆4000億円は東京電力への緊急融資に充てられるが、それを差し引いてなお、通常の数倍の資金需要になるという。

 企業側からすると、被災した設備を復旧し、当面の運転資金の調達を急ぐのは当然の行動だ。

 ただ、国内企業の多くは設備投資を抑えていたため、もともと潤沢な手元資金がある。2010年10~12月期の企業のキャッシュフローは前期比4.6%増の64兆4900億円に達するとされる。

 にもかかわらず、企業が資金調達に走った背景には、「企業の資金担当者の脳裏に、リーマンショックのパニックがある」(大手銀取締役)からだ。当時、世界経済が機能不全となったことで、企業は手元流動性を厚くしようと躍起になったが、社債やコマーシャルペーパーといった直接金融市場は麻痺。その代替先として企業は銀行に殺到した。ところが、自己資本の毀損を恐れた銀行は貸し渋りを強め、優良企業ですら資金調達に窮する異常事態に陥っていた。

 その苦い経験から、万が一に備えて資金の積み増しを急いだ側面が、企業側にあるのは間違いない。

 実際、起債環境の悪化から、全日本空輸など震災を受け社債発行を延期する企業が相次いでいる。

 とはいえ、自己資本を増強ずみのメガバンクに貸し渋りの心配はない。加えて今後は莫大な復興需要が見込まれる。

 大震災発の金融パニック懸念は、今のところ杞憂に終わる可能性が高いが、副作用も顕在化しつつある。

 「売り上げの急減で3月末の返済ができなくなった」「震災後、売り上げが10分の1になった」──。

 中堅・中小企業を主な取引先とする首都圏のある大手銀行支店は連日連夜、取引先の資金ショートの手当てに追われている。

 「今でさえ大混乱なのに、このまま行けば資金繰りが行き詰まる取引先が続出する」。同支店の営業担当者は、日本中を覆う自粛ムードや計画停電の余波であらゆる需要が細っているとして、取引先からの融資要請は4月からさらに増えると覚悟している。

 メガバンクへの融資要請の急増は、カネ余りで貸出先に困っていた銀行業界にとっては渡りに船に見えるが、ジレンマもある。

 営業担当者の目下の悩みは、「売り上げが回復する見込みのない企業にも、当面の延命策として貸し出さなければいけないこと」。融資を増やせば増やすほど、低迷していた預貸率は改善するが、将来的に不良債権化するリスクが高まっているのだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)

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