新聞報道によれば、政府は夏の電力不足解消のため、業界ごとの「節電の自主行動計画」や「輪番休止」(または交代休業)を導入する準備を始めた。日本経団連も、同じ考えを示している。

 一見したところ、これは計画停電方式の不都合を取り除き、秩序だった電力節約を実現するための望ましい方式であるように見える。

 しかし、ここには、経済運営の基幹に関わる重大な問題が隠されている。以下では、まず最初に、「輪番休止」は技術的にきわめて困難であることを指摘する。そしてつぎに、どんな形態であれ、「割り当て」は官僚による統制経済の復活を意味することを指摘したい。

現代の複雑な経済で輪番休止は不可能

「輪番休止」や「交代休業」の具体的な内容は明らかでないが、例えば「2週間ごとに操業する企業と休業する企業をわけて電力を使用する」といった方式になると考えられる。

 しかし、現代の複雑な経済では、輪番休止の実施は、きわめて困難である。強行すれば、経済活動に大きな混乱が生じる。

 つぎのようなイメージを描けば、それが納得できるだろう。例えば、コンビニエンスストアを考えよう。いま、7月の第1週はコンビニエンスストアは開店を許されているとしよう。しかし、営業のためには、商品棚にさまざまな商品が並んでいる必要がある。例えば、パンが並んでいる必要がある。そのためには、パン工場も同じ時期に操業を許されていなければならない。さらに、パンの生産に必要な原料を供給する工場も操業していなければならない。また、それらの製品を運搬する運輸業も、同時に動いていなければならない。このように、さまざまな関連経済活動の「同時性」が確保されている必要がある。

 現代の経済活動は、個々の活動が孤立して並列しているのではなく、さまざまな活動が複雑に絡み合い、相互依存しながら成立しているのだ。それらは、単に連関しているだけでなく、「同時に」操業していなければならない。「今回の震災でサプライチェーンが壊れた」といわれるが、それが関連性の何よりの証拠だ。

 そうしたことを前提にすれば、事業所ごとに時間を区切って操業することなど、不可能に近いと考えざるをえない。