自分は何のために生き、何のために働くのか――。

2011年3月11日を境に、そう自問自答し始めた日本人はきっと少なくないだろう。これまでの価値観を大きく変えてしまった東北関東大震災。

そうしたなかで大きな活躍をしたのが、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアだ。ただ、その一方でデマの流布が問題となったのも事実。

大震災をきっかけに、ソーシャルメディアが社会インフラとなっていくなかで、我々はどのようにこのメディアを活用し、復興に活かしていくことが大事なのだろうか。

また、これからのビジネスは、どういうところに活路を見出せばいいのか?

このたび出版された、ロバート・コリアー著『伝説のコピーライティング実践バイブル』の監訳者で、ベストセラー作家の神田昌典氏は、「70年前の“呼びかけの作法”こそが今後の日本を支えるカギになる」と語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

震災前後で、日本人の価値観が一変!
日本が“奇跡の復興の10年”を迎えるには?

――震災前と震災後で、日本人の価値観が具体的にどう変わるのでしょうか? 

神田昌典(Masanori Kanda)
株式会社ALMACREATIONS 代表取締役、公益社団法人学び力育成協会創設者。上智大学外国語学部卒。外務省経済局に勤務後、ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。その後、米国家電メーカー日本代表を経て、経営コンサルタントに。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本一のマーケッター」に選出されている。 ビジネス書、小説、翻訳書の執筆に加え、ミュージカル、テレビ番組企画など、多岐にわたる創作活動を行うほか、複数企業の社主を務める。 著書に、『全脳思考』『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』 『あなたの悩みが世界を救う!』(以上、ダイヤモンド社)、『成功者の告白』『人生の旋律』(以上、講談社)『非常識な成功法則』(フォレスト出版)、監訳書に『ザ・コピーライティング』(ダイヤモンド社)等がある。

 ユニクロを経営する、ファーストリテイリングの柳井正会長が10億円を寄付したと報道されたが、それは10億円を持っているよりも、《困っている人に手を差し伸べることのほうが幸せを感じられる》ということ。これは従来の資本主義を支える“お金を持つこと=幸せ”という思想が完全崩壊しつつあることを意味する。資本主義システムはまだ崩壊していないが、その根底にあった価値観が変わってしまったのだ。

 これからの日本人の価値観は、「みんなで支え合っていくしかない」という第二次世界大戦後すぐのものに戻る。実際、多くの若い人たちは抑えきれない衝動で、ボランティアに身を投じ、東北地方に駆け込んでいる。また稼ぐことのできる経営者は、もはや自分のためにお金を持つことには興味を失い、ビジネスを通して被災地を支援できることに心からの幸せを感じるようになってくる。

 価値観が一変した日本人が、今後どのような行動を取るか?

 これは日本国内だけではなく、全世界にとてつもない大きな影響を与え続けるに違いない。なぜならテレビによって拡大された日本の「悲劇のストーリー」は、どんなハリウッド映画を見るよりも刺激的なドラマになってしまっている。もはや世界は日本の物語に取り込まれている。日本人が正しい振る舞いをみせたとき、われわれのあり方は、世界中の経済活動の模範とされていくに違いない。世界の未来は、この日本から始まることが明確になった。