東日本大震災で甚大なダメージを受けた日本では、足もとで復興への気運が盛り上がり始めている。しかし、原発事故をはじめとする不安要因は依然として多く、先行きは楽観できない。復興税や日銀の国債引き受けにまで議論が及ぶなか、政府・日銀による復興支援の行方に注目が集まっている。金融政策・金融制度に精通する日本総研の翁 百合理事に、政府・日銀が目指すべき政策の姿を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

日銀の迅速な資金供給は非常に好ましい
決済システムの安定も重要な課題に

政府・日銀の緊急支援に求められる「次の一手」<br />議論が紛糾するなか、真に有効な政策を描けるか<br />――翁 百合・日本総研理事に聞くおきな・ゆり/1960年生まれ。東京都出身。日本総合研究所調査部理事。慶応義塾大学経済学部卒業。同大学院経営管理研究科修士課程修了。日本銀行勤務を経て、現職。

――東日本大震災で甚大なダメージを受けた日本では、足もとで復興への気運が盛り上がり始めています。しかし、原発事故をはじめとする不安要因は依然として多く、先行きは楽観できません。そんななか、政府・日銀による復興支援の行方に注目が集まっています。大地震発生から現在に至るまでの対応を、どう評価しますか。

 日本銀行は大地震の発生直後から、大規模な資金供給を行なっています。金融機関の手元資金の総量を示す日銀当座預金残高は、3月下旬に約41兆円となり、過去最高を記録しました。一方で日銀は、資産買入等基金を通じて国債、社債、CPなどの買い入れも行なっています。

 これまでにない大きなオペレーションによって、いち早く市場に流動性を供給していることは、非常に好ましいと思います。

――震災復興を見据えた足もとの対応は、現状のままで十分でしょうか。

 十分か否かは一概に言えませんが、しばらく非常事態が続くことが想定されることに加え、復興に際して民間企業や公共施設などの資金需要はますます増加していきます。引き続き、必要に応じてさらなる金融緩和が必要になる可能性があります。

 決済システムを決してマヒさせないことも重要です。先日起きたみずほ銀行のシステム障害を見てもわかる通り、現在のような非常事態において金融危機を引き起こさないためにも、決済システムの安定を保たなくてはいけません。

 原発事故の見通しが立たないうちは、個人消費の落ち込みなどにより、多くの企業が苦境に立たされる可能性もあります。民間から資金の出し手がいない企業に対して、国が政府系金融機関などを通じてサポートする仕組みも必要でしょう。