なぜ、30代の延長だと失敗するのか?

 私は20代でリクルートを退社し、MBA留学を経て、30代で起業しました。何とか食えるようになったので、広告代理店の営業ウーマンだった妻と結婚しましたが、最初の2年間は妻も働いていました。

 普通に生活できるようになって、子供も生まれ、ようやく人並みになってよかったと思ったのが30代半ばで、そこからそのままの延長で人生が進むであろうと信じて疑わなかったのです。

 しかし、30代後半になって、それまで順調だった仕事はどん底になります。そこで、ようやく身をもって、30代の延長で40代は過ごせないことに気づいたのです。

 直線的な成長によって迎えた30代。失敗も経験しましたが、それなりにうまくいっていたことで、積極的に攻める姿勢を失っていました。現状に満足し、ゼロから顧問先を新規開拓することに億劫になっていた自分がそこにいたのです。
そこからです、私がようやく重い腰を上げたのは。

 そのまま30代のやり方を踏襲してしまったら、せっかく事前に聞いていた諸先輩からのアドバイスは水泡に帰してしまうわけですから、とにかく初心に戻って新しいことにチャレンジすることを決意したのです。

 その結果は意外に早く訪れました。500万円単位で増えていった収入は、すぐに3000万円を突破、その後も1000万単位で増えるようになり、あっという間にプロ野球選手のようになってしまいました。諸先輩から聞いた後悔リストを念頭に入れながら、果敢に挑戦したことによって、40代で年収は10倍になったのです。

 また、出版のチャンスをつかんだのも40歳のときです。49歳となる今は、マラソンの有森裕子さんの企業研修プログラムもプロデュースしています。アメリカ留学時代のバルセロナオリンピックで、テレビの前で応援していた選手を目の前にして仕事をしているのも、キツネにつままれたような感じです。

 まさに40代で花開いた人生だと思います。
自分にそんな能力があったとは思えませんし、血のにじむような努力もしていません。ですが、単に運が良かったからでもないのです。

 それは「後悔しないリスト」を、成功した諸先輩、そして失敗した諸先輩からも聞いて知っていたからです。彼らがなぜ、40代という「空白の10年間」を後悔していたのか、私は30代後半の逆境の中でそのことに気づき、彼らの教えを忠実に実践していったことが原因だと思っています。

 この10年を30代の延長だと考えずに、まったく違った10年だととらえることができたからこそ、今の自分がいるのです。