福島第1原子力発電所の事故により、政府のエネルギー戦略の見直しは必至だ。国内原発メーカーはこの難局をいかに乗り切るのか。三菱重工業の大宮英明社長に、原発事故による業界への影響や見通しに加え、4月から始まった「約50年越しの悲願」ともいえる組織改革の狙いなどについて聞いた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

三菱重工業・大宮英明社長
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──震災後、原発設備を納める顧客への対応は。

 当社は福島第1原発にはかかわっていない。だが、同様の災害が起きた場合のリスクについて、震災後の2日間で資料を作成し、顧客である北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電に渡した。すでに対応策も提案しており、一部は改修することが決まっている。

──電力の安定供給までには時間がかかりそうだ。

 震災の影響で、今後、電力が不足するのは間違いない。

 こうしたなか、被災した火力発電所に約200人の社員を派遣し、復旧を急いでいる。東京電力、東北電力管内には当社が納めた火力発電所が数多くある。さらに、産業用火力発電設備を保有する工場もある。生産設備が損壊していても、発電設備が動けば電力を供給できる。

──日本の原発の「安全神話」が崩壊した。事故はなぜ起きたのか。

 事故の原因をコメントするには、まだ時期が早過ぎる。現段階でいえることは、これほど高い津波が来ることは想定外だったということだ。

──政府のエネルギー戦略の見直しは必至だ。国内における原発事業への影響は。

 安全性や技術などについての再評価が始まるだろう。国内の新設案件については工程が遅れる可能性が高い。その一方で、既設の原子力発電所を動かしていくということになれば、補強工事の需要が増えることになる。

──東電は海外事業どころではなくなる。電力事業者を巻き込んで建設から運営管理まで行う「パッケージ型提案」が困難になるのではないか。

 確かに東電の海外展開にブレーキがかかる可能性は否定できない。

 いずれにせよ、事故が収まった後、各国でいろいろな評価がなされるだろう。海外事業が縮小するのは避けられないのではないか。