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野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

金融緩和を停止し円高誘導しなければ賃金と消費が減少する

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第22回】 2017年2月16日
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 2016年7~9月期までは、実質消費が順調に増えていた。これは、消費者物価が低下して実質賃金が上昇したためだ。しかし、10~12月期では、円安によってその状況が変わり、実質消費の伸びが鈍化している。

 この状況が続けば、実質賃金の下落と実質消費の減少という現象が再現する。

10~12月期は
実質消費伸び率が鈍化

 2月13日に公表されたGDP統計(1次速報)によると、2016年10~12月期の実質GDPの成長率(対前期比、季節調整済み)は、0.2%となった。この結果、16年の実質成長率は1.0%となり、15年の1.2%よりは低下した。

 図表1に見るように、実質民間最終消費支出の前年伸び率は、14年、15年と連続してマイナスだったが、16年にはプラス0.4%になった。伸び率の絶対値はそれほど大きくないものの、2年連続して落ち込んでいた実質消費が増加したことの意味は大きい。

 これは、1~3月期、4~6月期、7~9月期と連続して対前期比がプラスだったためだ。

 こうなったのは、消費者物価が下落し、実質賃金が上昇したからだ。

 16年は、年初から円高が進み、株価が下落した。11月のいわゆる「トランプ相場」までは、こうした状況が続き、経済があまり順調でないという印象を持つ人が多かった。

 しかし、実質GDPで見れば、7~9月期までは順調な成長が実現した年だったのだ。

 しかし、10~12月期には、この状況が変化している。

 後で見るように、11月からの円安と原油価格の持ち直しによって、輸入物価指数は上昇に転じており、それを反映して、消費者物価指数の対前年伸び率のマイナス幅が縮小しつつある。

 このために、10~12月期には名目民間最終消費支出は0.3%の伸び(対前期比、季節調整済み)であったにもかかわらず、実質ではマイナス0%になってしまった。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る

 日本が直面している課題は、実体経済をいかにして改善するかである。それは金融政策によって実現できるものではない。
 金融緩和に依存して長期的に衰退の道を辿っているヨーロッパ大陸諸国と日本。それに対して、新しい情報技術をつぎつぎに開発し、高度なサービス産業に特化して成長しつつあるアメリカとイギリス。両者の差は、イギリスのEU離脱によって、具体的な 形を取りつつある。
 日本はいま、基本的な成長のパタンを大きく変更しなければならない。これは、純粋な研究開発だけの問題ではない。企業の仕組みや社会全体の構造が重要な役割を果たす。

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