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経済は地理から学べ!
【第3回】 2017年2月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
宮路秀作 [代々木ゼミナール・Y‐SAPIX東大館地理講師]

イギリス料理が「マズい」と言われる
本当の理由

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「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!仕事に効く「教養としての地理」

地理とは、農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

最新刊『経済は地理から学べ!』の著者、宮路秀作氏に語ってもらいます。

イギリス料理の「マズさ」には、理由がある

 イギリス料理と聞いて、みなさんはどのような料理をイメージするでしょうか?

 「何か特別なものってあった?」「イギリス料理ってマズいって聞くけど……」。こうしたイメージを持っている方が多いかもしれません。

 ところで、イギリス人は牛肉をよく食べます。「No meat, no life.」とばかりに、とにかくよく食べます。しかも、あまり野菜をとりません。

イギリスはかつての氷食地です。そのため土壌中に腐植層が少なく、痩せ地です。ジャガイモはとれますが、野菜があまり育ちません。特に冬場の野菜不足は深刻でした。イギリスがアイルランドを植民地支配し、農作物の供給地として位置づけた理由が見えてきます。当時、アイルランド人は実質イギリスの農奴でした。

 現在のイギリスは立憲君主の政治体制を採っていますが、イギリス史上唯一共和制だった時代があります。ピューリタン革命によってオリバー・クロムウェルが護国卿に就任した時代です。このときよりイギリスの支配階層となったのが、ジェントルマンと呼ばれる人たちでした。

 ジェントルマンはプライド高き支配層であり、服装やマナー、飲食など、生き方全般において、「俺たちはジェントルマンだから!」と独自の生き方を決めていきます。

 中でも飲食に関しては、「ジェントルマンは、暴飲暴食はせずに質素な食事を好む」と決めていました。

 料理の品数は少なく、肉を焼いた物をただ食べるだけ。稀にスープが食卓に並ぶ程度でした。400年近くも支配階層にいたジェントルマンが食事にほとんど興味を持たなかった。これはイギリス料理の発展にとって致命的な足かせになりました。

 また、フランス革命後にフランスと対立するようになると、フランス文化の排除も行われます。

産業革命でさらに事態は悪化

 18世紀後半、イギリスで産業革命が起こりました。産業革命は、工場制機械工業によって大量生産が可能となった時代でした。これによって都市部においては仕事が増えました。

 都市部では、就業機会の増加によって可容人口が大きくなりました。そして農村部から多くの人たちが都市部へと流入します。

 これは都市部、特にロンドンの過密を招きました。都市の過密はさまざまな都市問題を引き起こします。後に、エベネザー・ハワードによって提唱された「田園都市構想」はこれを背景としています。

農村部に人が多かったときは自給自足が可能だったわけですが、都市部で人口が増えるとお店で食材を買いそろえる必要が出てきます。料理文化の断絶が起こりました。お金のない低所得者層は、ろくな食事をとることができず、日頃の過酷な仕事によって栄養状態は悪化していきました。

 19世紀半ばになると、トロール漁法が発明されました。これによって魚が都市部にも流通するようになり、フィッシュフライとフライドポテトをセットで提供する料理(フィッシュアンドチップス)が出回るようになりました。

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 宮路秀作(みやじ・しゅうさく) [代々木ゼミナール・Y‐SAPIX東大館地理講師]

 「東大地理、センター地理」などの講座を担当する実力派。
 一部の講師しか担当できないオリジナル講座を任され、 これらは全国の代々木ゼミナール各校舎・サテライン予備校にて サテライン放映(衛星通信を利用して配信)されている。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった! 」と大好評。
 講義の指針は、「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。代ゼミ講師2年目から模試の作成にも携わり、2011年からは東大プレの担当も任されている。開設講座のほとんどがサテライン放映されており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師を担当するなど、「代ゼミの地理の顔」となる。生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けている。 東京、名古屋、札幌、新潟と、全国の校舎で教壇に立つ。代ゼミ新潟校・名古屋校で開講された自身初のオリジナル講義は、100人教室が初年度から満席。翌年からサテライン放映講座となる。対面授業、サテライン授業あわせて、1週間で2000人以上の生徒を指導している。


経済は地理から学べ!

地理がわかれば、経済ニュースがもっとわかる! 仕事に効く「教養としての地理」。
「東大地理」を担当する“現役"予備校講師が教えるから、面白くて、わかりやすい!
地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。
農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、
現代世界で目にする「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
地理という“レンズ"を通せば、人間の経済活動により深い解釈を加えることができます。

「経済は地理から学べ!」

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