トランプは「暴君」か「名君」か、それとも賢い「悪役」か大胆な物言いや振る舞いで話題に世界の注目を集めるトランプ氏 Photo by Keiko Hitomi

 早いもので、トランプ氏がアメリカの大統領に就任してから1ヵ月超たった。どんなことが起きるのかと世界中が戦々恐々としていたが、すでにいろいろあったと言うべきか、首脳会談を満面の笑みで終えた安倍内閣にとってはひと安心といったところか。いずれにせよ、トランプ氏の大統領としての評価が定まってくるのはこれからだ。世界の緊張はまだまだ解けない。

 さて、会社においてもこのような“常人ではない人”がトップになることがある。これらの社長は、裏では「暴君」とも呼ばれたりもするが、暴君にも実際にはいろいろなタイプがある。

●暴君タイプ1「改革者型暴君」

 不振の会社に乗りこみ、大ナタを振るって改革を進めるプロ経営者と呼ばれる人がいる。

 改革のリーダーであるこのタイプは、既存の経営思想を否定し、新しい経営のパラダイムを掲げ、実際に改革を実施する人たちだ。競争上のポジションを変え、ビジネスモデルを変え、コスト構造を変え、人の意識を変え、人の動き方を変えていく。多くの場合、最初のころの評判は散々で、既得権益者とそれに乗っかる社内世論やマスメディアによって、暴君のレッテルが貼られる。

 しかし、彼らは時代に合った経営コンセプトと市場に適した戦略を持ち、(株主からの)強い後ろ盾などを背景に大胆な人事を押し通す胆力がある。そうして一歩一歩改革を進め、成果が出はじめると周囲の風向きが変わり始める。まず顧客や社会からの評判が変わり数字が伸びる。組織の中でも彼らに影響されたやる気に満ちた人たちが登用され、やがて多数派を占めるようになる。そうすると、評価も180度変わる。旧来の考え方やルールに慣れ親しんだ人から見ると、まぎれもない暴君なのだが、実は会社を救ってくれる名君だったというわけだ。

 この例に見られるように、改革を進める暴君が名君に変わるためには、目に見える成果と外部からの高い評価が絶対に必要だ。成果が出ても継続しなかったり、少しでも目立った失敗をすると、足元をすくわれて、いつのまにか外されてしまう。