「東芝の呪縛」が解けJDI悲願の最終黒字見えたジャパンディスプレイは、官民ファンドの産業革新機構が主導するかたちで、東芝、日立製作所、ソニーの液晶部門が統合し2012年に発足した Photo:JIJI

 企業存続の危機に立たされている東芝が昨年12月、保有していた中小型液晶最大手ジャパンディスプレイ(JDI)の株式を売却した。売却額は40億円前後とみられる。

 売却が表面化したのは今年2月に入ってからだ。折しも、米原子力発電事業による7000億円強の特別損失計上に大きく揺れているときだっただけに、焼け石に水のような売却額を見て、東芝はそこまで苦しいのかという印象を一部に与える結果になった。

 東芝はマスコミに対し、巨額損失が判明する「前の段階で、すでに売却している」とその因果関係を否定したが、昨年末という売却のタイミングを踏まえると、財務改善とは全く別の要因も作用していたように映る。

 その要因とは、JDIの前身である東芝モバイルディスプレイ(TMD)が抱えていた借金の完済だ。

 TMDは早くから米アップルと取引関係を深め、iPhone用の液晶パネルを供給してきた経緯がある。2012年に稼働した石川県の能美工場の建設に当たっては、設備投資に必要な資金1000億円弱(推計)をアップルから借り受け、5年間で返済する契約を結んでいた。

 ただ、その借金がJDIとして新たに発足して以降も、赤字を生み続ける“呪縛”として機能することになってしまった。