中小型液晶最大手のジャパンディスプレイをめぐる支援協議が難航している。その背景には、救済か競争力強化かで揺れ動く産業革新機構の姿があった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
「一体何をもたもたしているんですかね」。大手銀行の幹部は、そう言っていら立ちを隠さない。
苦しい経営が続くジャパンディスプレイ(JDI)をめぐって、今夏に官民ファンドの産業革新機構による財務支援の話が持ち上がったものの、そのスキームが半年近くたった今になっても、まだ固まっていないからだ。
JDIに運転資金を融資する銀行としては、貸し倒れのリスクを最小限に抑えるためにも、一日でも早くスキームを固めて、財務支援を実行してほしいわけだ。
いら立ちは、JDIの経営をかなり不安視していることの裏返しでもあるが、そこまで気をもむのには、少なからず理由がある。
それは、JDIが銀行融資の前提条件となる「財務制限条項」に抵触してしまうほど、最終赤字が続いているからだ。
そもそもJDIは、日本の産業競争力強化を目指して、革新機構の主導によってソニー、東芝、日立製作所の液晶部門を統合し、設立された「日の丸液晶」会社だ。
2014年に上場したものの、巨大市場の中国でライバル企業に売り負けたり、最大顧客である米アップルのiPhoneの販売不振の影響をもろに受けたりしたことで、14年度、15年度と2期連続で最終赤字を計上。
さらに、拙い資金計画によって運転資金がピーク時(1400億円超)から半減してしまい、昨年以降は銀行融資に依存する財務体質に陥っていた。
実際に今年3月末時点のJDIの資金繰りの状況を見ると、最低でも1カ月以上は必要とされる「手元流動性比率」が、たったの0.6カ月しかない。
そうした状況で、今年6月までは、みずほ、三井住友、三井住友信託の3銀行と結んだ総額600億円の融資枠を利用して、100億円単位で運転資金の借り入れをしては、1カ月前後ですぐに返済するといったことを繰り返していたようだ。
しかしながら、その後も最終赤字によって純資産を食いつぶす状況をなかなか改善できず、関係者によると「結果として財務制限条項に抵触してしまい、融資枠は利用できなくなった。今夏以降は短期のつなぎ融資で、何とか対応しているのが実情」という。