歯の噛みあわせが悪いと、集中力が途切れ、肩こりや腰痛もひどくなる、といった話を聞く。これを日本で最初に主張したのが、群馬県高崎市にある「丸橋全人歯科」の医師たちだ。この意見は当初こそ黙殺されたが、現在、同歯科は有名スポーツ選手が通うほどの人気を得ている。彼ら“歯並び先生”たちの主張は「歯は全身と影響しあっている」というものだ。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

縄文人が歯周病に
かからなかった理由とは

 歯周病は実に恐ろしい病気だ。歯の周りの骨が溶け、歯茎が赤く腫れる、血が出る等の症状が現れ、最終的には歯が抜ける。お年寄りになると入れ歯が増えるのは歯周病の影響だ。

歯周病が「玄米」「小松菜」で改善する理由辻本院長はこれまで、5000例以上の造骨手術を手がけてきた

 その特徴は「3S」と言われる。まず「Silent(静か)」。自覚症状が少なく、重症化しないと気づけないのだ。次に「Social(社会的)」。歯周病は日本人の成人の8割以上が罹患していおり、歯を失う原因の第1位、由々しき問題なのだ。最後は「Self Controllable(予防可能)」。ケア次第で、予防可能といわれている。

 ケアの常識は単純だ。今まで「歯周病の最大の原因は歯垢に潜む細菌である」とされてきた。そこで「日常的に歯と歯茎を丁寧にブラッシングし、歯垢を除去することが最も有効だ」といわれる。

 しかし、丸橋全人歯科の辻本仁志院長は、別のアプローチを試みていた。

「もちろん歯垢除去は大切ですが、これに加え3週間ほど、食事の糖質を少なくするか、白米を玄米に変えてみてほしいのです。初期の歯周病であれば、症状が劇的に緩和される場合がありますよ」

 丸橋全人歯科は、その名の通り「歯は全身と影響を及ぼしあっている」と考え、治療を行う歯科医だ。現状の保険制度では、この病院の医師たちが考える治療がしにくいため、保険を利用しない形で治療を行っている。

 辻本院長よれば、先の主張をするにあたって、重要なデータがあったという。

「実は、縄文人は歯周病がほとんどなかったのです。また、先代の院長は歯と全身の関連を研究するため、モンゴルでも調査を繰り返しました。結果、都市部では歯周病が見られたもののの、遊牧民の間ではほぼ見られなかったのです。ブラッシングに関しては、我々、現代の日本人のほうが、よほどしっかり実践しているにもかかわらずです」

 辻本院長らは「現代日本人の生活習慣や食生活に原因があるのでは?」と話し合うようになった。そんななか、辻本院長はある法則性に気づいていった。

「患者さんの中に、ブラッシングを徹底的に行ない、スケーリング(歯石の除去)を行っても、歯周病がどんどん悪化していく方たちがいました。しかも、これらの患者さんは、歯周病で歯がなくなったあと、インプラント治療を行うために歯のまわりの骨を補強する手術を行っても、元の骨が柔らかすぎて、いい結果が出せないのです」