先日、上海の友人Dはメールで「日本人は今、いったい何を食べているのか?」と尋ねてきた。どうやら中国では「日本の食品は全滅だ」と思われているようだ。

 無理もない。中国の国家品質監督検査検疫総局は24日、福島第一原発事故による放射性物質の漏えいを受け、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県で生産された一部食品(乳製品、野菜とその製品、果物、水産品)の輸入禁止を発表したが、それ以来、上海など大都市では日本の食品が敬遠されるようになっているのだ。

 だが、冷静に考えれば、そもそもこの5県から中国に輸出している農産物はほとんどないと言っていい。福島県からはラーメン、生麺、甘酒などが、また栃木県からは味噌加工品、日本酒が輸出されているぐらいだ。果物といっても、日本から輸出できるのは、それこそリンゴとナシ以外にはない。従ってこの段階での影響はまだまだ限定的だったはずである。

事実上の全面輸入禁止は
日本への“仕返し”?

 しかしながら、4月8日、中国は上記5県に長野、埼玉など7県を加えた12県からの食品輸入を禁止した。12県以外からの輸入については「日本政府が発行する放射性物質検査合格証明及び原産地証明」を求めているのだが、これが意味するのは、「産地を問わず、日本からの食品輸入は一切禁止する」ということに他ならない。

 ジェトロ広報室は「検査は民間に委託し、原産地証明は商工会議所が出している。ここに政府がお墨付きを与えるしくみは日本にはない」とコメント。また、中国が出す「関税分類番号」に詳細商品の特定がないことからも、「口に入るものすべて」が禁輸措置となってしまったというわけだ。日本としてはもはや手も足も出ない格好だ。

 ある官僚はこう漏らす。「中国政府による日本への仕返しでは」――。