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経済は世界史から学べ!
【第15回】 2017年3月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
茂木誠 [駿台予備学校 世界史科講師]

銀行はもともと、「銀の預かり所」だった。
基軸通貨の世界史(1)

歴史から学ぶ経済のしくみ! 仕事に効く「教養としての世界史」

増税、TPP、円高、デフレ、バブル、国債、恐慌etc

歴史の流れを知ることで、
「なぜ」「どうして」がスッキリわかる!

『経済は世界史から学べ!』の著者、茂木誠氏に語ってもらいます。

金や銀が、貨幣として流通していた時代

 古代以来、「貨幣」は金属でした。

 金(Gold)の産出が多いのはアフリカ大陸で、北アフリカを領土にしていたローマ帝国は金貨を大量に発行していました。これを「ソリドゥス(solidus)金貨」といいます。

 やがて北方から遊牧民に追われたゲルマン人が流入してきます。今でいう大量難民です。これを止めるのには兵隊が必要で、ソリドゥスをばらまいて傭兵隊を組織しました。ゲルマン人を傭兵にして、ゲルマン人の侵入を止めたりしています。ソリドゥスで雇われた兵隊だからソルジャー(Soldier)というのです。もともとの意味は「傭兵」です。

 財政難から帝国が衰退すると、アフリカからの金の流入も途絶え、ソリドゥス金貨はどんどん質が落ちていきます。混ぜ物をして、重さをごまかすわけです。商人はすぐに見破りますから、貨幣価値がどんどん下がり、物価が上昇します。財政難とインフレで、ローマ帝国は崩壊したのです。

 一方、中東地域はあまり金が採れないので、古代ペルシア帝国は銀(Silver)を貨幣に使っていました。

 中世になって、イスラム帝国が中東からアフリカ北岸までを統一すると、ローマ帝国以来のディナール金貨と、ペルシア帝国以来のディルハム銀貨の二本立てとなりました。ローマ金貨やペルシア銀貨には皇帝や王の肖像が刻んでありましたが、イスラムは偶像を禁ずるので、貨幣に刻まれるのはコーランの一句です。

 「アッラー以外に神なし、ムハンマドはアッラーの使徒なり」

 イスラム教徒に敗北して地中海の北に押し込まれたヨーロッパ世界では、アルプス以北で取れる銀が貨幣として流通します。

 16世紀にチェコのザンクト・ヨアヒムスタール(聖ヨアヒムの谷)で大規模な銀山が発見され、大量に作られたターラー銀貨(谷の銀貨)がヨーロッパ諸国で流通し、銀貨の代名詞となりました。 このターラー[thaler]が、英語のダラー[dollar](日本語のドル)となったのです。

 なぜ、紙幣が生まれたのか?

 銀の持ち歩きは重くて不便なので、銀を預かってその預かり証を発行する両替商がイタリアに出現しました。両替机をイタリア語でバンコ(banko)といい、ここから銀行(bank)の名が生まれたのです。漢字の「銀行」は、「銀を扱う商人組合」と言う意味です。宋代の中国で同じ業種の商人たちが通りに店を並べたので、商人組合を「行(こう)」と呼んだのです。

 両替商(銀行)が発行する銀の引換券が、やがて貨幣価値をもつようになりました。政府がこれを発行したのが紙幣の始まりです。中国では、12世紀の宋代から紙幣は流通していて、元朝を訪れたマルコ=ポーロがびっくりしています。しかし、王朝末期には財政難のため乱発してインフレを起こす、の繰り返しでした。

 大航海時代にアメリカ大陸を征服したスペインが、メキシコと南米で次々に銀山を発見し、先住民に掘らせて大量の銀貨を発行し、ヨーロッパに持ち込みました。この銀貨が「太陽の沈まぬ国」といわれたスペインの栄光をもたらしますが、栄光の時代はわずか1世紀ほどでした。

 銀山が枯渇したのです。かつてスペインという国は、軍事力で領土を広げ、新しい銀山を手に入れて富を吸い上げていました。そのシステムが崩壊したのです。産油国は、石油が出なくなったらおしまいです。それと同じことです。

 このスペインの無敵艦隊を破ったのが新興国のイギリスです。

 イギリス人が賢かったのは、銀山を直接経営しなくても、貿易代金で銀を受け取ればよいことに気づいたことです。はじめは毛織物、ついで綿織物の工業を盛んにして、製品を世界中に輸出したのです。これを後押ししたのが産業革命で、世界の銀が血流のようにロンドンへ流れ込みました。
(次回に続く)

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茂木誠(もぎ・まこと) [駿台予備学校 世界史科講師]

駿台予備学校世界史科講師。
「東大世界史、難関国立大世界史」等の講座を担当。映像を駆使したストーリー仕立ての講義は、「歴史の流れ」がわかると大好評。予備校の東大受験クラスから初学者まで、あらゆる学力の生徒を教えるテクニックがある。時事問題を歴史的な切り口から考察する『もぎせか館ブログ』を運営するブロガーとしての顔も持つ。

 


経済は世界史から学べ!

本連載は「世界史というレンズ」を通して、経済をより深く理解するというアプローチをとったものです。
経済(お金)に関する事柄は、ある日突然生まれたものではなく、歴史的な必然性を持って生まれます。
ゆえに、その歴史の必然性を知ることで、経済をより深く理解することができるのです。
増税、TPP、円高、デフレ、バブル、国債、恐慌etc。
「そのとき、何が起こっていたのか」という歴史の流れを知ることで、経済の「なぜ」「どうして」がスッキリわかるようになります。
著者は、駿台予備校講師の茂木誠氏。「東大世界史」「難関国立世界史」等の講座を担当する実力派です。
歴史の流れをわかりやすく、そして深く理解させるプロフェッショナルが、「経済を世界史から学ぶ」という試みに挑戦します。

「経済は世界史から学べ!」

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