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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

今後の日本経済を左右する
電力需給の不確実性

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第11回】 2011年4月27日
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 今後の日本経済の活動水準を規定するのは、需要面の要因ではなく、供給面の要因である。

 需要面では、復興投資が今年の秋ごろから本格化することは間違いない。これは、固定資本形成(企業設備投資、民間住宅投資、政府固定資本形成)を10%ほど増大させることになるだろう。GDPに対しては2%ほどの大きさになる。

 供給面の制約がなければ、これは、乗数効果によってGDPを2%以上拡大させることになるだろう。つまり、巨額のケインズ政策が行なわれたのと同じことになるわけだ。多くの経済予測が、こうしたメカニズムが働くとの期待から、「日本経済は今年の秋以降拡大する」としている。

 しかし、問題は、投資需要の拡大に応じて、生産が拡大できるかどうかである。生産拡大を制約する要因としては、つぎの2つのものがある。

 第1は、生産設備が震災によって損壊したことによるものだ。これは、被災地での生産活動を制約するだけでなく、被災地外の生産活動にも、サプライチェーンを介して制約になる(自動車生産について、その影響がすでに顕著に生じている。3月の国内生産は、トヨタ、ホンダが対前年比6割程度の減、日産が5割程度の減となっている)。ただし、この問題は、時間の経過とともに徐々に解決されてゆくだろう(国内自動車生産が平常に戻るのは、今年末ごろとされている)。

 生産拡大を制約する第2の要因は、東日本における電力制約だ。電力供給が回復しないと、他の供給能力に余裕があっても、生産を拡大できない。今夏の電力制約がかなり厳しいことは、間違いない。政府や経団連は、東京電力管内の大口需要の25%削減を目指している。

 ただし、制約は夏だけとは言えない。以下に見るように、東日本では2011年度冬の需給はかなりタイトであり、上で見た投資増加を支えられるだけの生産拡大を実現できるかどうか、確かではない。

 また、中長期的に見ると、原子力発電の新設がきわめて困難になっていることから、厳しい電力制約が日本全体に生じる可能性が高い。

 以下では、この問題に関する定量的な評価を試みることとしたい。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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