経営×物流
「経営×物流」日本の企業経営には物流戦略が足りない
【第3回】 2017年3月14日
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西村 旦 [カーゴニュース編集長]

ヤマトが値上げの先に見据える“アマゾンとの交渉”の中身

ネット通販の隆盛は何によってもたらされたか

 かつての宅配現場の働き方は、朝に営業所に届いた荷物を午前中のうちに配達し、午後からはエリア内の顧客を回って荷物を集荷するというのが基本パターンだった。

 ときにはライバル会社から荷物を奪ったり、顧客の困り事に対して新たなサービスを提案することもあった。顧客との会話の中からヒントを得て、新商品の開発につながったケースもあったと聞く。ヤマトの配達員が「セールスドライバー」と呼ばれる所以だ。

 だが、通販荷物が急増したことで、配達員は時間指定や再配達に追われ、セールスに時間や労力を割く物理的、精神的余裕がなくなった。特にアマゾンの配達を請け負うようになって以降、午後にも大量の荷物が波状的に営業所に届くようになり、夜間まで配達に追われるようになっているという。

 物理的な労働条件の悪化に加え、こうした仕事の質的変化も、現場が疲弊を深めている要素ではないだろうか。

 世界No.1の高品質を誇る日本の宅配便システムをつくりあげたのはヤマトであり、その功績についてはここで言を弄するまでもない。現在のネット通販の隆盛も、ヤマトをはじめとした高度な宅配便サービスなくしてはあり得ないものだ。

 通販事業者は、いま一度そのことに思いを致してもらいたい。今後は消費者のお得感をいたずらに煽るかのような「送料無料」の表示は慎むべきだろう。

 その一方で、ヤマトにも反省点はなかっただろうか。

 「日本のわがまま運びます」――。ヤマトが1991年に放映していたテレビCMのキャッチコピーだが、筆者はそのフレーズを聞いたとき、若干の違和感を感じたことを正直に告白しておく。

 もちろん、個人間荷物が相当数を占めていた当時と現在では状況がまったく違う。ただ、「サービスが先」という理念のもとで新サービスを次々と打ち出し、結果として消費者を「やってもらって当たり前のサービス」だと“錯覚”させてきた。そこに盲点はなかっただろうか。

 サービス強化の果てにいまの現場の疲弊があるとするなら、そこに一定の抑制が働くべきではなかったのか。もっと早い段階で対策が打てたはずだとの思いは残る。

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西村 旦 [カーゴニュース編集長]

カーゴニュース編集長。1969年生まれ。92年株式会社カーゴ・ジャパン入社。『カーゴニュース』編集部記者として、物流事業者、荷主企業、関係官庁などを幅広く担当。2011年代表取締役社長兼編集局長に就任。同年、幅広い交通分野での物流振興を目的として創設、優良な論文などを顕彰する「住田物流奨励賞」(第4回)を受賞。
 


「経営×物流」日本の企業経営には物流戦略が足りない

日本の産業界を支える物流機能。EC市場、通販市場の急速な拡大等によって経済情勢が大きく、速く変化していく今、企業経営者は競争力を左右する重要な経営戦略として「物流」を捉えることがますます重要になっていく。「経営×物流」では、企業経営における物流戦略の在り方、その戦略を支える物流業界のあるべき姿を考えていく。
 

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