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日本を元気にする新・経営学教室

キャリアの転機から生まれるパフォーマンスを
左右するメカニズムを解き明かす
神戸大学大学院経営学研究科教授 平野光俊

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],髙木晴夫
【第14回】 2011年5月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
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 4月はサラリーマンにとって人事異動の季節である。栄転、抜擢、意にそぐわない異動もあるし、期待していた異動がなかった場合もある。読者諸兄はいかがであったか。

 前回のコラムでは、本社が策定した戦略をトップダウンで実行するのではなく、「人材マネジメント型企業変革リーダー」が、組織メンバーの人材価値・人間行動に働きかけ、それぞれが直面する環境への適応を促し、その結果、事後的に戦略が浮かび上がってくる「創発的戦略」について解説した。

人事異動がパフォーマンスに
結び付くメカニズムとは

 このとき、人材マネジメント型企業変革リーダーによるメンバーへの働きかけの方策の一つが、役割と人材のマッチングの組み換え、すなわち「異動」である。それでは異動がパフォーマンスに結び付くメカニズムは、どのようなものか。

 これまで労働経済学では、異動とパフォーマンスを結ぶ原理は「知的熟練」という考え方によって説明されてきた。知的熟練とは変化と異常が起こった時の原因推察力と対応力のことである。たとえ工程管理がゆきとどいた工場であっても、職場の作業は決して普段の作業で尽きはしない。頻繁に変化と異常が起こっている。

 異常事態にあって「その場のその人」(the man on the spot)が、生産ラインを長く止めることなく治具や工具を変え、微修正を行い、うまく対応できるかどうかで効率は大きく変わる。時と場所の特殊事情に根ざして分散している情報を、集中あるいは統合的に処理することができないのなら、直接の作業者である「その場のその人」が現場情報(変化と異常)を処理したほうが効率的なのである。

 このように考えると、キャリア形成は前後工程を幅広く経験することが合理的となる。というのは後工程で発見された異常の原因は、前工程で生じているケースが多いから、前後両方の工程の経験を積むことで、原因の推察力が高まるからである。したがって、とりわけ日本企業に特徴的なのであるが、知的熟練を形成するために生産労働者には幅広いOJTが施されてきた。幅広いOJTとは一人の労働者が自分の職場の主な持ち場を経験し、ときにその経験がとなりの職場に及ぶことをいう。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。


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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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