なぜ医師の説明の言葉はわかりにくいのか「カンピロではないと思います」「ノロ、ロタの類でもないでしょう」――等々。病院で診察を受けた時、医師の専門用語の乱発でわかりにくいと思った経験はあるか?

 4歳の息子がお腹が猛烈に痛いと叫び、15分おきに下痢するので緊急で病院に行った。

 ひととおり受診し、「先生、何の病気だったのですか?」と私が尋ねると先生は、

なぜ医師の説明の言葉はわかりにくいのか『教養バカ――わかりやすく説明できる人だけが生き残る』
竹内 薫
SBクリエイティブ
224ページ
800円(税別)

「カンピロではないと思います。その場合は一週間出血しますし、ノロ、ロタの類でもないでしょう。今は症状のジュウトク化を防がないといけません」

 えと、それで…。私の質問に答えていないと判断したので、思わず

「先生、私は医師ではないのです。医学用語でなく、わかるように答えていただけますか?」

と言ってしまった。先生は「失礼しました。細菌性腸炎の疑いが強いです」と仰ったのだが、お互いにぎこちなさを味わい解散した。というか、いつも医師と話をすると腑に落ちない感じがする。質問が性急すぎるのだろうか?

 知識ばかりをつめこむ。ひけらかす。自分中心の会話をする。上から目線の発言をする。

 そういった人達を、もれなく本書では「教養バカ」と呼んでいる。

 彼らは学歴も高いケースが多い。にもかかわず、会話においては難解な言葉を並べただけで、結局何を言っているのか理解できないこともある。自分の話で悦に入ってしまう御仁も沢山いる。ちなみに先の会話で、カンピロとはカンピロバクターのことであり、ジュウトクとは重篤(認知率は50.3%)のことである。