個人金融資産1400兆円の8割は50歳代以上が保有
生まれてくる子どもには900兆円の借金が…

 日本の個人金融資産は1400兆円だが、その8割は50歳以上の世代が持っていると類推される。彼らの預貯金は国債という国の借金の金利で膨らみ続け、それは再び新たな借金という国債購入につながっている。松本さんは言う。

「一方で今、日本に生まれてくる子どもは、生まれた瞬間に900兆円の借金を背負っているわけです。それは、あまりに不公平ではないですか。赤ん坊はまだ、何もしていないんですよ」

 これほどの国の借金があるのに、世界の国々は日本について問題だ、心配だ、と大騒ぎしないではないか、という声もある。事実、日本の借金の大きさは、国際比較でもかなりのスケールになっている。GDPを比較したOECDの統計(2010年6月)によれば、日本の国の借金(債務残高)はGDP比で199パーセント、アメリカ89パーセント、イギリス82パーセント、ドイツ81パーセント、フランス93パーセント、イタリア132パーセントと比べると、まさに突出している。

 だが、なぜ世界は騒がないのか。円も売られていない。まだ見捨てられたりはしていない。松本さんはその理由をこう教えてくれた。
「消費税がまだたったの5パーセントだからですよ。まだまだそこにゆとりがある、と世界は思っているからです」

 たしかに日本の消費税は、世界からすれば驚くべき低い水準である。イギリス17.5パーセント、フランス19.6パーセント、イタリア20パーセント、ドイツ17パーセント……。対して日本は5パーセント。まだまだ引き上げられる余地あり、と見ているということだ。

「日本人だってバカじゃないだろう、と世界は思っているはずです。財政が苦しくなったら、最後は消費税を上げるだろう、と。僕たちが思っている以上に、日本人は合理的だと思ってくれている可能性がありますね。消費税でなんとかするだろう、と。これを30パーセントまで上げられる、と」

 若い人によっては、消費税を上げられたら困る、などと思う人もいる。だが、それはむしろ反対だ、と松本さんは言う。自分たちの未来を守るために、今から消費税を上げておいたほうがいいのだ、と。そうでなければ、このまま借金ばかりが膨れ上がる可能性がある。消費税を上げるよりも、借金をするほうが、政治家にとっては簡単だからだ。そして消費税を上げて税収を増やさなければ、これまでの国の借金も、これから増えていく借金も、まるまる若い世代が抱えることになるのだ。

「税金は少ないほうがいい、なんていう幻想には、十分に気をつけたほうがいい。もちろん無駄遣いは問題外ですが、税金が少ないということは、国の予算は何かで補塡されているということになるんです。それこそ、今は国債でどんどん借金ができる。ばらまきの政治が続けられる。これは、後からツケを払わされることになる」