1400兆円といわれる日本の個人金融資産の8割は50歳以上の世代が持っていると類推される。彼らの預貯金は国債という国の借金に変わり、公共事業につぎ込まれる。一方で、これから日本に生まれてくる子どもは、生まれた瞬間に900兆円の借金を背負うことになる。このままでは、日本は国際社会の中で、没落の一途を辿りかねない。
ダメな人にお金を貸し続けているのが、日本人
日本の借金は、国と地方を合わせて約900兆円だとされている。そしてこの「国の借金問題」が語られるときによく出てくるのが、日本はお金持ちの国だ、日本には家計部門に1400兆円もの個人金融資産がある、だから、この程度の借金は問題がない、という話である。
だが、900兆円の借金を、今すぐに1400兆円で帳消しにできるわけではない。国民が「はい、それでは預貯金をすべて今の国の借金に差し出します」などと言うだろうか。言わないだろう。強制的に行うとすれば、預金を封鎖するしかない。一方的に、預金をおろせなくしてしまう、ということである。
現実的にはそんなことはありえないだろう。だが、実はそれにとどまらず、日本の借金と個人金融資産の間には、極めて危険な関係があると、松本さんが教えてくれた。
「ちょっと前まで、日本の金融資産は1200兆円だったんです。それが1400兆円に増えた。では、何が増えたのかといえば、預貯金が増えたんです。では、この200兆円のプラス分はどうやって増えたのか。運用によって増えたわけですが、何の運用かといえば、預貯金の運用で増えたわけですね。では、その預貯金金利の大きな原資は何かといえば、国債です。実は個人金融資産が増えたときに、同時に日本には増えたものがあった。それが国債であり、日本の借金なんです。国債という借金が、日本の個人金融資産を増やした。つまり、日本の個人金融資産と日本の借金は、表裏一体の関係にある、ということです」
自分たちの借金の金利によって、自分の懐をほんのちょっとだけ温めてもらう。そんな構図が今の姿なのだ。だが、それは、まさにタコ足配当ともいうべき状況、自分の足を食べているようなものではないか。
「インチキなんですよ。国が膨大な借金をつくり、国民は預貯金がちょっと増えたと喜んでいるけれど、同時に自分たちの集合体の借金は増えているんです。資産が増えたようで、同時に借金も増えているんです」
国は借金ができるからと、せっせと国債を発行する。それを金融機関が買っているということは、そこに国民の預貯金が入ってきているということになる。つまり、国民の預貯金が増えれば増えるほど、それだけ国の借金が増やせる。そして国が支払う国債金利は、預貯金の金利となって個人金融資産を増やす。そんな構図が出来上がってしまっているということだ。