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岸博幸のクリエイティブ国富論

結局は震災前のエネルギー戦略から脱却できない
東電救済スキームと浜岡原発停止のまやかし

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第139回】 2011年5月13日
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 今月に入ってから、菅政権は日本を確実に衰退させる間違った政策決定を二つも行ないました。一つは浜岡原発の停止であり、もう一つは東電救済スキームの決定です。

方向性は正しいが、プロセスが杜撰な浜岡原発停止の影響

 浜岡原発の停止という方向性自体は正しいと評価することができます。それでも、菅政権の決定は今後に禍根を残すものと言わざるを得ません。それは、決定のプロセスがあまりに杜撰だからです。

 まず、浜岡原発を停止させた場合、それが中部電力管内はもとより日本全国の電力需給にどのような影響を及ぼすのか、そしてそれが産業や経済にどのような影響を及ぼすのかを事務的にしっかりと詰めた形跡はありません。

 しかし、例えば中部電力は東京電力に100万キロワット弱の電力融通をしていること、中部電力管内は日本の製造業の中核で供給電力の半分が産業用途であることなどを考えると、浜岡原発の停止の影響は当然大きいのであり、それをしっかりと詰めることなく決定するというのは、論外です。

 更に問題なのは、浜岡原発の停止要請を菅総理が行なったというのは、官邸が原子力安全・保安院の判断は信用できないと公に認めたに等しいということです。

 福島第一原発の事故が起きてから、原子力安全・保安院は日本全国の原発に対して緊急安全対策を講じるよう指示を出しました。そして、菅総理が浜岡原発の停止を要請した同日に、浜岡を含むすべての原発がそれをクリアしたと発表しています。それなのに菅総理が浜岡原発の停止を要請しているのです。

 その根拠は大地震が起きる確率という確率論ですが、新潟中越地震も東日本大震災もその確率が非常に低い場所で起きました。つまり、何%なら安全とは言えないのです。となると、原発を地元に擁する自治体は当然疑心暗鬼にならざるを得ませんので、定期点検中の原発の再稼働は非常に難しくなるでしょう。その結果、電力不足がドミノ倒しのように全国に広がる可能性が非常に高くなってしまったのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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