韓国、危機的状況での大統領選に保守派のダークホース登場か朴槿恵氏は、大統領の弾劾・罷免後に、検察の取り調べを受けた。与党にとっては大きな打撃となり、次期大統領も左派候補が優勢だ Photo:REUTERS/アフロ

韓国で、朴槿恵前大統領が弾劾・罷免され、5月9日に大統領選挙が実施されることになった。次期大統領選挙候補者で支持率トップの文在寅氏は左派。親北朝鮮派として知られ、対米、対日関係の悪化も懸念される。韓国経済の低迷が続いている中、次期大統領は手腕を発揮できるのか。(経済ジャーナリスト 池 東旭)

 韓国経済界は、朴槿恵氏の大統領弾劾・罷免の余波に、息を潜めている。贈収賄罪で朴氏と共に起訴されたサムスン電子の李在鎔副会長のほかに、ロッテホールディングスの辛東彬(=重光昭夫)会長やSKグループの崔泰源会長といった財閥オーナーも、同様の容疑で追及されている。

 大統領選挙は5月9日に実施されるが、それまで韓国は権力の空白期となる。大統領を代行する黄教安内閣は過渡的存在にすぎず、行政はまひしている。公務員も様子見に終始して積極的に動かない。財界も新規事業を全てストップしている。

 政治の混乱に加えて、国際情勢も激動している。特に韓国経済界が頭を痛めているのが対中関係だ。

 中国は米国が進めるTHAAD(戦域高高度ミサイル防衛)の韓国配備に強く反発して、韓国製品のボイコットなど経済制裁を断行した。中国政府は、THAAD関連施設がロッテ所有のゴルフ場の敷地に建設されることを理由に、中国国内で営業中の過半のロッテマートの営業停止を命じた。3月からは、中国から韓国への団体旅行(昨年は約800万人)が禁止された。

 韓国の対中国の輸出入額は全体の2割前後を占める。貿易、投資、文化交流などあらゆる分野で、日本や米国より中国への依存度ははるかに高い。安全保障・軍事で米国に依存する韓国にとってはジレンマだ。

 韓国経済は危機的状況にある。GDP成長率は、15年以来、3%を切っている。輸出は伸び悩み、内需も冷え込んでいる。韓進海運など海運・造船企業の破綻が相次ぎ、雇用も悪化している。2月の失業者数は135万人になり、1999年の通貨危機以降、最悪の数字になった。