ジャズのレコードジャケットに得たヒント
今も目を引く技ありの写真の使い方

 『プロフェショナルの条件』をデザインするときに一番こだわったのは、写真の使い方。あえてカバーの端で写真を半分に切るように(袖にまたがるように)配置しているのですが、これによって思索的な感じが出せました。

 ほかにも理由はあって、ドラッカーさんの写真は、同じ写真しかなくて、新しいものはないんです(笑)。写真をカッコよくトリミングすることで、ほかと差別化しようと。

 ジャズが好きで、ジャズのレコードのジャケットにこういうやつがあるんですよ。ブルーノートの……ケニー・バレルの……「ファイブスポット」でのライブ盤だったかな。そのジャケットがヒントになっていますね。

装丁家の醍醐味は、<br />世の中に影響を与えられること<br />装丁家・重原隆氏(前編)『プロフェッショナルの条件』のアイデアのヒントになった、ケニー・バレルのレコードジャケット。

 このカバー、金色と墨色でまとめていますが、この墨色、実は墨色とグレーの2色を選んで重ねてつくっています。これは、「ダブルトーン」と言って、一色の時よりも強く出るし、重版のとき色が「転ばない」という強みがあります。CMYK(注:シアン、マゼンダ、イエロー、黒)の4色分解で色をつくると、重版の度に赤っぽくなったり、青っぽくなったりすることがあるんです。
この仕事がうまくいってから、ダブルトーンをよく使うようになりましたね。そういう意味でも、印象に残っています。

書籍の装丁に興味をもつようになったきっかけから、意外な創作の原点まで語ってくれた重原さん。次回は、『ブラック・スワン』や『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』 などの創作秘話、そして音楽とのさらなる結びつきをお聞きします。

 重原隆(しげはら・たかし)
装丁家。
1962年、東京生まれ。
金沢美術工芸大学を卒業後、デザイン事務所、父保男氏の事務所を経て独立。
年間150冊以上の装丁を手がけ、世に送り出した書籍は1600冊以上。
http://homepage3.nifty.com/shigehara-sotei/