FXなどで日本の個人投資家に人気の高い豪ドルですが、5月に入ってから続落しています。

 私は、豪ドルは短期的に84円、1.02ドル割れへ向かうと考えています。

 それ以上に重要なのは、当面の「豪ドル高」は終わった、つまり、中長期的な天井を打った可能性があるということです。

これまで、豪ドル相場が乱高下していたワケは?

 豪ドルは一時、対円で90円前後、対米ドルでは1.1ドルまで上昇しました。

 このような「止まらない豪ドル高」の背景には、「豪ドル高」が経済政策的に正しい方向へ、むしろ「正しすぎる方向」へと向かっていることがあると思います。

 だからこそ、そこに「バブル」が発生するリスクが潜んでいるということを、後ほどご説明したいと思います。

 豪ドルは、今でも高金利通貨として人気が高いですが、つい数年前までは、貿易収支が赤字の国の通貨でした。

 このため、高金利の魅力で外国からおカネが集まって「豪ドル高」となっても、何かの拍子にそのおカネが逆流すると、そのとたんに急落するのが弱点でした。

 しかし、2年ほど前から貿易収支が比較的コンスタントに黒字化するようになると、このような弱点はかなり克服されました。

 貿易収支は資本に比べると安定的ですから、何かの拍子に資本が豪州から一気に逃げ出しても、貿易黒字による「豪ドル買い」が一定の歯止めをかけるようになったわけです。

「正しすぎる豪ドル高」だからこそ、「バブル」の可能性

 他方で、「先進国で経常赤字の国は通貨安を容認する」というのが、現在、世界経済で議論されている基本的なG20(20ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)の考え方です。

 ちなみに、この「先進国で経常赤字」というのは米国です。

こんなふうに見ると、豪州と米国はG20で志向される政策において、対極的な立場にあるということをおわかりいただけるでしょう。

資料1

 

 かたや通貨高容認、かたや通貨安容認で、その意味では「豪ドル高・米ドル安」はまさに正しい方向性でしょう。

 しかし、このように誰が見ても「正しい豪ドル高・米ドル安」だからこそ、誰もがそれに殺到する結果、行き過ぎて「バブル」になるリスクがあるのです。

 「バブル」というのは、強気と弱気がきっ抗する中では起こらず、強気でも、弱気でも、一方向に支持が圧倒的に集まる中でこそ起こるのです。

豪ドル高が1.1ドルを大きく超えていくのは考えにくい

 それでは以下の「資料2」と次ページの「資料3」で、豪ドルの適正水準、購買力平価との関係を見てみましょう。

 すると、適正水準よりも、かつてないほど「豪ドル割高」が拡大していることがわかります。

 ちなみに、豪ドルの対米ドルでの購買力平価は0.69ドル程度ですから、1ドルを大きく超えた最近の「豪ドル高」は、かつて経験したことのない空前の「豪ドル割高」ということになります。

資料2

 

 2000年以前までは、購買力平価からの割高率は1割を超えないのが普通でした。ところが、ここ数年は3割前後まで拡大するのが当たり前になっています。

 これは最初に述べたように、豪州の貿易収支黒字化などを受けた構造変化の影響がありますが、それにしても、割高率が5割前後に達している状況はちょっと気になるところです。

 ちなみに、購買力平価から3割の割高で0.9ドル程度という計算になります。

 過熱した「豪ドル高」の反動が入れば、その水準までの反落は想定する必要があるでしょう。

 一方で、この空前の割高がさらにどんどん拡大して、「豪ドル高」が1.1ドルを大きく超えていくというのも、ちょっと考えにくいように思います。

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