新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』では、脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法を紹介していきます。記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。

試行錯誤の末に生みだされた
脳の編集力を最大限に利用した記憶術

 私は記憶競技の練習を始めてからほどなく記憶力日本選手権大会で優勝し、記憶力日本一となることができました。それには理由があったのです。

 短期間で勝負するためには、他の人と同じことをやっていても勝てません。自分独自の記憶テクニックを編み出すことが先決だとまずは考えたわけです。

 けれども、そんなに簡単に新しい方法が思いつくものでもありません。

 そんななか、試行錯誤の末に行ったのが次の方法なのです。

 新しいアイデアは、まったくゼロの状態からは生まれません。

 そこで脳や記憶に関する知識がたまり、それらが頭の中で整理された頃、アウトプットの作業を行いました。

 どんなアウトプットを行ったかというと、自分の頭の中にある知識、考え、アイデアなど思いつくものすべてを紙に書き出すというものです。

 なぜ紙に書き出す行為を選んだかというと、自分の頭の中の記憶に関する知識を「見える化」したかったからです。

 書き出された内容を目で見て脳に取り込むことにより、そこからまた連想が膨らんで新しいアイデアにつながることを期待したのです。

 紙に書き出すといっても、じっくり時間をかけていいアイデアを思いつくのを待って書いていくわけではありません。

 制限時間を決めて、まったく手を止めずに字を書き続けたのです。

 慣れないうちは途中でペンが止まりがちになることもあったのですが、それでも手を止めずに、そんなときは「今は考えが浮かばないけれどすぐに何か浮かぶはず。そうだ◯◯について考えてみるのはどうか」など、その瞬間浮かんだことをそのまま正直に書き続けました。

 手を止めずに書き続けたのには訳があります。

 考える時間があると、人の脳というものは、すぐにかっこつけようとするのです。つまり、見た目だけよくて中身があまりないアイデアを作ろうとするのです。

 その脳の「編集したがり屋」は常識的な考えを求めたがります。この「編集したがり屋」の動きをセーブするためには、手を動かし続けることが必要だったのです。

 イメージとしては、頭の中と手が直結しているような感じが理想です。

 このアウトプットを続けていくうちに、自分の頭の中が明確になっていきました。そして期待していたとおりに、「わかっていること」と「わかっていないこと」の確認も同時にできるようになりました。

 さらに続けるにつれ、アイデアがひらめく回数も増えていったのです。

 こうして新しい記憶術を編み出していきました。

 私は人にものを教える仕事をしています。

 効率のよい勉強方法はないか、その意識が頭にいつもあるので、このアウトプットが勉強にも有効な手段であることにすぐに気づいたのです。

 頭の中にある知識が必要なときに取り出せるものかどうか確かめておく必要があるために、有効な手段が知識を自己確認することです。

 このアウトプットで頭の中身を目に見える文字にすることにより、本当に覚えているか、理解しているかの自己確認をすることができます。

 また、それを見ることによって覚えていなかったり、理解できていなかったりする自分に足りない部分をピンポイントで確認することもできます。非常に効率のよい復習をすることができるというわけです。

 さらに、記憶という観点からもこのアウトプットは効果的です。この作業自体が経験の記憶になりうるからです。

 本書でお伝えするアウトプットを利用する勉強法は2種類あります。

 一つは知識を深く掘り下げていく方法、もう一つは知識のネットワークを作る方法です。