新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』では、脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法を紹介していきます。記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。

記憶のプロでも使っている、頭文字で覚える方法

 ここまで勉強内容を覚えやすくするための工夫をいくつかお伝えしてきましたが、記憶術には、あまり工夫を必要としない、省エネで手軽にできる便利な方法があるのです。

 皆さんがすでに使っているものです。

 太陽系の惑星、「水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星」を「すい・きん・ち・か・もく・どっ・てん・かい」と唱えて覚えませんでしたか。

 化学で出てくる元素の周期表、「水素・ヘリウム・リチウム・ベリリウム……」も「すい・へー・りー・べー……」ですね。

 これらの文字列にまったく意味はありません。今まで意味のないものの記憶は脳は苦手であると言ってきましたが、なぜこれらは覚えることができたのでしょうか。

 それは「脳をだまして、記憶力を上げる3つの方法」のところで出てきた「脳のだまし方(2)」の条件を利用したからです。

「記憶の定着度=復習の回数」

 復習すればするほど、記憶はしっかり定着していきます。要するに、最初に受ける印象の薄さを回数でカバーしたというわけです。

 今回の記憶術は、この脳の特性を利用する方法です。

 やり方はとても単純で、複数の覚えるべき言葉の頭文字を取り出して、それらをつなぎ合わせて文字列にするだけです。

 まったく意味をなさない文字列が出来上がりますが、それで問題ありません。

 これまで紹介してきた記憶術は、脳にインパクトを与えて強く印象を残すのが目的でした。それにより、はじめから記憶が強く残るという利点がありました。

 しかし、今回の方法は準備や工夫がほとんどいらないぶん、復習の回数で補う必要があります。

 頭文字を集めて出来上がった文字列を読むのにそんなに時間はかかりません。

 言い換えると、ストレスなく簡単に何度も復習ができる記憶術ともいえます。

 その手軽さゆえ、これまでの記憶術で重要視してきた脳に与えるインパクトを回数で補うことが可能なのです。したがって、この記憶術のポイントは、単純に「声に出して何度も唱えること」だけです。

 試しに、戦後のアメリカ大統領を覚えてみましょう。

「トルーマン」
「アイゼンハワー」
「ケネディ」
「ジョンソン」
「ニクソン」
「フォード」
「カーター」
「レーガン」
「ブッシュ」
「クリントン」
「ブッシュ」
「オバマ」
「トランプ」

 これらの頭の文字だけとって文字列を作ると、「トアケジョニフォカレブクブオト」となります。

 初めて聞く音なので、「一体何のこっちゃ」という感じですよね。

 何度か口にしていると、自分なりにしっくりくる区切りの位置が見つかります。

 私なら、「トアケジョ/ニフォカレ/ブクブオト」で切りますね。

 その位置で区切って唱えればリズムも取りやすくなり、音が体に馴染みやすくなります。

 あとは、これを口に出して繰り返すだけです。繰り返しているうちに、「すいきんちかもく……」や「すいへーりーべー……」のように音が脳に染み付いてきます。

 この記憶術は簡単にできて、しかも応用範囲はかなり広いものです。

 ヨーロッパのEU加盟国だろうが、シェイクスピアの悲劇の作品名だろうが、何にでも使える方法です。ただし、何度も繰り返して音を体に染み込ませないとすぐに忘れてしまうので、そこはくれぐれもご注意を。