経産省と経団連がつくったTOEIC
日本のビジネス界ではTOEIC人気が急上昇だ。しかし、こちらアメリカではTOEICを知っている人は皆無に近い。私は出会ったことがない。私は日本人の英語力不足の根源にはTOEIC問題があるのではないかと思う。TOEIC問題は電力利権構造に似ている気がする。その背後に経産省と財界の癒着を感じるのだ。TOEIC志向を変えるか、TOEICの内容を変えるか、どちらかを実行しないと日本人の英語グローバル化は進まない気がする。
TOEICは1970年代に、日本人の国際コミュニケーション能力に危機感を抱いた当時の通産省と経団連が米国ニュージャージー州プリンストンに本部がある世界最大の非営利テスト開発機関、ETS(Educational Testing Service)に働きかけて作った試験だ。ETSはTOEFLをはじめ、欧米の大学大学院への留学に課せられる試験やアメリカの公共機関や学校関係のテストの大半を開発・制作している。1977年9月から折衝を開始し、2年の研究開発を経てTOEICテストが実現。当初の動機は国を憂う純粋なものだったと思う。
TOEICはマークシートでヒアリング(聴き取り)、リーディング(読解力)重視の試験だ。つまり、昔ながらの、「海外の知恵や技術を取り入れるための英語」の試験ともいえる。一方、今のTOEFLはライティング(書く力)とスピーキング(話す力)に大きく舵を切った。つまり発信能力を問う試験になっている。一般にTOEICがいくらできてもTOEFLで通用しないという。今の世の中、英語で発信することがさらに重要になっている。
ある試験の専門家に言わせると、「学術的素養も問われるTOEFLでは当時の日本人に難しすぎた。よって、日本人に合わせた英語力試験を作る必要があり、それがTOEIC。TOEFLを欧米人と同じ土俵で争う硬式野球とすると、体力のない日本人用に生まれた軟式野球のようなローカルスポーツ」という。