節約、巣篭り、リスク分散・回避、癒し、省エネ、安心・安全――ボストンコンサルティンググループが4月に行った調査では、この6つが震災後の新たな消費トレンドとして見えてきたそうです。
世の中は変わりました。震災から2ヵ月半あまりの体験により、自分の生き方や人生観そのものさえも変わってしまったという感覚を持った人は、私自身も含め決して少なくありません。今後のマーケティングも、千年に一度の大震災という特殊な経験により大きく変化した消費者の意識に合わせて、その方向性を変えていくことが必要です。
なぜいま、結婚産業が
活況なのか
その中で今、特需に沸いているのが結婚関連業界です。震災以降、結婚志望者または結婚するカップルが急増しているというのです。実際に大手結婚相談所の「オーネット」では、問い合わせや入会、さらに成婚退会者が昨年の同時期と比べて20%も増加していて、4月の資料請求の数も前年比10~15%増ということです。しかもその特徴として、男性に比べて、女性の数が圧倒的に増えているといいます。
また楽天市場では震災後、結婚指輪の売り上げが拡大中で、「マリッジリング」のカテゴリー全体の売上高は、震災以降の1ヵ月で前年同期比25%の伸びを見せました。地域別にみると、首都圏在住の成婚者数が多いのが特徴だそうです。
オーネットは女性の動きが目立つ原因として、「首都圏は直接的な被害を受けたエリアは少なくても、帰宅難民になったり、計画停電などによって震災の影響を受けた人が非常に多く、暗い夜道や部屋で孤独感にさいなまれた女性たちが、安心できる家族の存在を求めている」ということなどをあげています。
このように、結婚モードに傾く女性が増えているのは、震災を経験したことにより、将来への不安や孤独感からパートナーとの強い“絆”という繋がりを求めているからではないでしょうか? そうした心境の変化の根底にあるのは、先行きの不透明感ゆえの将来に対する不安とともに、震災により人々の間に芽生えた「自分が社会や仲間たちと繋がっていたい」という強い思いです。そこから、“絆”というキーワードが震災後のマーケティングを考える重要なヒントとして浮かび上がってきました。