子宮頸がん検診の有用性を統計的手法で考える子宮頸がん健診は20歳以上の女性が対象です

 今回のテーマは、「子宮頸がん」と「ベイズ推定」である。二兎を追うような感もあるが、仔細に言えば、「子宮頸がん検診で陽性と判定されたとき、精密検査を経て子宮頸がんに罹患していることが確定する確率」を「ベイズ推定」し、その過程を通して、子宮頸がん検診の有用性をより深く知ってもらおうと試みるものである。ベイズ推定は、ビッグデータの活用が注目される中で利用価値が高まっている統計手法だ。【6ページ文末に補足1】

年間約9000人が感染する子宮頸がん
早期発見のための検査の有用性を検証しよう

 子宮頸がんの発症は、そのほとんどが性交渉の際にヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:以下HPV)に感染することに起因することが知られており、日本では子宮頚がん症例のほぼ100%(世界的には90%以上)でHPVが検出されている[6ページ文末に出典1]。また、日本では年間約9000人が子宮頸がんと診断され、2700人が死亡している(2013年)[2]。ちなみに、39歳以下では(子宮体がんと子宮頸がんを合わせた)子宮がんのほとんどは子宮頸がんであり、全ての部位の中で乳がんの次に罹患率が高い[1]

 したがって、子宮頸がんを早期発見できるかどうかは、女性にとってはもちろんのこと、娘を持つ親にとっても一大事であるはずだ。この一大事に対して、ベイズ推定による子宮頸がん検診の有用性と事後確率を提示することには大いに意義があるのではないか――これが本テーマを取り上げた動機である。

 なお、“子宮頸がん”と聞けば、子宮頸がんワクチンの接種後に健康被害の訴えが相次いだことや、関連の報道を想起された方も少なくないだろう。しかしながら本稿は、予防策としての子宮頸がんワクチン接種の是非を論ずるものでもなければ、子宮頸がんワクチン接種と子宮頸がん検診の優劣を論じるものでもないことをあらかじめ申しあげておきたい。