福島第1原子力発電所の事故が、南へ約120キロメートル離れた東海原子力発電所の廃炉工程を狂わせる可能性が出てきた。東海原発は日本原子力発電が持つ日本最古の商用原発で、1998年に運転が終了し、2021年3月に廃炉工程が完結する予定だ。
原発の廃炉は、原子炉施設の解体の過程で周辺の土地が放射性物質に汚染されないように、法律によって細かく規制されている。そのなかに「クリアランスレベル」と呼ばれる基準がある。原発内で使われていたコンクリートや金属などの廃材から10マイクロシーベルト/年以上の放射線量が計測されれば、放射性廃棄物として処分しなければならないというものだ。
茨城県環境放射線監視センターが測定した東海原発周辺での3月15日以降の累計放射線量は330マイクロシーベルト。「年間で1ミリシーベルトに達する可能性がある」というのだ。
つまり、今までなら放射性廃棄物として区分されることが少なかった建屋の外壁なども、クリアランスレベルの放射線量(10マイクロシーベルト/年)をゆうに超える可能性が高いのだ。そのうえ放射能汚染の起源が東海原発自体なのか、福島第1原発なのかが判別できなくなり、廃棄物処理をいっそうややこしくしそうなのだ。
原子力安全・保安院幹部も「東海原発の廃炉工程の見直しや、廃炉コスト増加の懸念がある」と漏らす。
地震発生後、施設の健全性を確認するために廃炉工事はストップしている。そのためクリアランスレベルに抵触する廃材がどの程度出るかは不明だが、日本原子力発電にとっては頭の痛い問題になりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)