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東京電力債格下げで思い知る、債券運用の難しさ

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第183回】 2011年6月1日
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東電債、格下げ

 今、多くの資金運用者がため息をついたり、対策会議に追われたりしているのではないか。原因は、東京電力の債券だ。

 トレーダーとかファンドマネージャーと名乗るほど市場の前線にいなくても、各種の基金や資金を運用する運用担当者が日本には相当数存在する。

 彼らが運用する、年金資産や、何らかの事業に備えた積立金、いわゆる「余資」(余剰資金のこと)、預貯金、などの運用は、株式のような明らかにリスクのある資産で運用するのではなく、「元本の安全性」に配慮して、「高格付の債券」で「手堅く」運用することになっている場合が多い。

 国債ほど発行量が多く流動性があるわけでもないが、東京電力の社債(いわゆる「電力債」の中の「東電債」)は、少し前まで、安全性が高く、換金したい時の流動性もあって、多くの運用者は、安全性の高い社債の代表だと考えていた。東京電力は、4兆数千億円の発行量を持つ社債市場最大の発行主体だった(現在、新規発行が止まっているので、今後徐々に減るはずだが)。もちろん、この金額の東電債を今も「誰かが持っている」のだ。

 しかし、3月11日の東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故発生で状況が一変したことは、読者もご存じの通りだ。

 経済規模の大きな首都圏に独占的な営業基盤を持つ超優良会社であったはずの東京電力だが、今や、国の支援を前提としないと存続が危ういことが公然と語られる経営危機に陥った。

 格付会社は債券の信用度を判断する情報を提供する事業を営む会社だが、こうした事態の発生を受けて、3月18日には外資系のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)がAA-からA+に、同じく外資系のムーディーズがAa2からA1に格下げし、日系のR&Iも3月25日にAA+からAA-へと東電債を格下げした。4月1日には、日系のJCRも重い腰を上げてAAAからAAへの格下げを発表した。

 その後も格下げや格下げ方向を示唆するクレジットモニター(格付け変更を検討中であることを公表する格付業界用語)が相次ぎ、先週末時点でS&PがBBB、ムーディーズがBaa3、R&IがA、JCRがA+という状況だった。

 ここで、週明けの5月30日、S&Pが東電債をBB+まで引き下げることを発表した。ちなみに、会社としての東京電力に対する債権(銀行のローンなど、東電債と異なる無担保の債権)に対する格付けはB(「シングル・ビー」と読む)とした。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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