東芝は本当に半導体子会社を売却する必要があるのかPhoto:AP/AFLO

 東芝は4月11日、監査法人からの「意見非表明」という異例の形で2017年3月期の第3四半期決算を発表した。パソコン事業等の不正会計で窮地に陥った一昨年度に続き、昨期は米国の原子力事業子会社ウエスチングハウス(WH)が2015年末に実施した買収の結果として巨額損失が発生するとされ、2017年3月期には6200億円の債務超過に陥るとの見通しが公表されている。

 この事態への対処策として、東芝は本体から分社化した半導体メモリー会社、「東芝メモリ」の株式を売却するという。これに対して、経済産業省や経済界の一部からは技術流出への懸念が表明されている。

 東芝の再建に当たって、半導体子会社株を売却する必要は、本当にあるのだろうか。本稿では、東芝の再建のあり方の全体像を扱うのではなく、東芝が今の時点で半導体子会社を売却する必要があるのかどうかに絞って考察してみたい。

東芝が
半導体子会社を売る理由

 東芝が半導体子会社を売却しなければならない理由は、大きく分けて二つあるとされている。

 一つは、上場維持の要請だ。東証の上場廃止基準(東証1部・2部)によると、2期連続債務超過になると自動的に上場廃止となる。先期の決算が債務超過になる見通しであることは既に述べた通りなので、今期(2018年3月期)も債務超過を解消できない場合、東芝は上場廃止になってしまう。上場廃止になると、東芝の信用力に問題が出ることや、資金調達手段に制限がかかってしまうこと以外にも、株式に流動性がなくなり、既存株主にとっては株式を処分しにくくなるという問題が発生する。

 もう一つは、銀行の要請だ。東芝は、三井住友銀行、みずほ銀行など主力行のほかに、数十もの金融機関から融資を受けている。金融庁の自己査定基準によると、債務超過の融資先は、原則として「破綻懸念先」という債務者区分に分類されることになる。