原因不明の細く長い胸痛
医師は「心因性」を疑った
(あれ、痛いっ、何?)
ある朝、左胸をきゅうっとつかまれるような細く、長い痛みに驚き、八重子さん(仮名・49歳)は自転車を止めて立ちすくんだ。
倒れ込むほどではないが、明らかに異常だ。
(心筋梗塞の前兆かもしれない)
怖くなった八重子さんは、出勤をとりやめ、近所の病院に駆け込んだ。
循環器科を受診し、心電図を撮り、カテーテルで冠動脈の状態を調べる検査(冠動脈造影検査)も行ったが、結果は「異状なし」。
痛みもなくなったため、「様子を見てください」と告げられ、帰された。
(何もなくても、たまたま、痛むこともあるのかもしれない)
八重子さんは無理やり自分を納得させ、その後しばらくは忘れていたが、2ヵ月経った朝方、再び異変に襲われた。
前回と同じ痛みが1時間以上も続き、(やはり、絶対におかしい)と確信し、今度は会社の近くにある大病院を「紹介状なし」で受診。
何時間も待ってようやく受診でき、CT検査、24時間器具を装着して心電図を撮る検査などをしてもらったが、結果はやはり「異状なし」。