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「引きこもり」するオトナたち

地下鉄サリン事件を機に「そううつ病」へ
退職や離婚も余儀なくされた被害者の過酷な人生

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第71回】

 新潟県中越地震に新潟県中越沖地震、今年3月には長野県北部地震と、新潟県長岡市は、たびたび大きな地震に見舞われている。

 現在、同市に住む「いっしー」さん(ペンネーム・47歳)は、1995年3月に起きた地下鉄サリン事件を契機に、当時勤めていた東京都内の大手ビル管理会社を退職。その後、休職を繰り返し、妻とも離婚するなど、不安定な生活状態に陥った。

 現在は、引きこもりなどの心の病経験者のみで構成する「K-BOX」で活動中のいっしーさんに話を聞いた。

地下鉄サリン事件の“あの車両”に
乗り合わせていたいっしーさん

 朝、いつものように乗った通勤途中の地下鉄の車内で、人が倒れるようなバタンという音が2回ほどした。

 異変が起きたのは、地下鉄日比谷線の小伝馬町駅付近。4メートルほど離れた右側の床に、水たまりのようなものが見えた。

 いつもは電車のドアの脇に立って、会社に通っていた。しかし、その日に限って、座席に座り、スポーツ紙を読んでいた。

 電車が築地駅に着く直前、今度は左側で、初老の紳士が、まるで2時間ドラマでも見るかのように、喉元に手を当てて、う~と唸りながら、後ろにバタンと倒れた。

 隣に座っていた男性が口にハンカチを当てて、「毒ガスだ!逃げろ!」と叫んだ。次の瞬間、男性が非常停止ボタンを押したため、電車は築地駅付近で急停止した。

 乗客たちは手でドアをこじ開けて、ホームに駆けだした。しかし、駅の階段に差しかかると、足に力が入らずに階段を上がれない。

 走ろうとしても力が入らないのは、サリンの症状だ。

 外に出ると、青空が広がっていた。助かったかなと思って、タクシーで会社に向かおうとした。

 タクシーに乗ると、運転手が「何かあったんですか?」と話しかけてきた。「電車の中で、何かあったみたいです」と話しているうちに、いっしーさんも気持ちが悪くなってきた。

 そのうち、息が苦しくなり、話すことができなくなってきた。「すみません」と言って、目を閉じると、意識が遠くなった。目が覚めると、運転手が途中の虎の門病院に運んでくれていた。集中治療室で点滴を受け、ようやく気分がよくなった。

 病院には4日間、入院した。会社に復帰したのは、退院から1週間後のことだ。

しかし、事件後初めて地下鉄に乗ったときは、緊張した。車内にいると、嫌な気分になり、何となく息苦しくなった。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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