
ベストセラー『コンビニオーナーぎりぎり日記』は、コンビニ大手「ファミリーハート」(仮称)とFC契約を結ぶ郊外店の現役オーナー、仁科充乃さんがコンビニ経営の実態を赤裸々につづった本だ。そんな仁科さんがこの度、コンビニオーナーを辞めたという。なぜ今、30年間も夫婦で切り盛りしてきた店を譲り渡したのか。商売の環境変化や本部との関係性など詳しく話を聞いた。(ダイヤモンド・ライフ編集部)
激安ドラッグストアが
コンビニ密集地に殴り込み
――本書でも、10年ごとの契約更新の度にオーナーを続けるか苦悩が書かれていましたが、ついに辞めたのですね。
夫婦でコンビニオーナーになってから30年と半年間、本当に頑張りました。最後の半年は本部に引き留められたんですよ、ずるずると。本当は昨年春で契約が切れる時、辞めるつもりだったのですが、「店舗と従業員を引き継ぐ新しいオーナーが見つかるまで、何とか続けてくれないか」と本部から懇願されたんです。
実は一度、新オーナーが見つかったのですが、ちょうどその時、近所のローソンが閉店したので、「引き続き仁科さんご夫婦でやりませんか」と本部から言われまして。それで夫も気持ちが揺らいで、「辞めるのを止めようかな」と言い出した。そしたら本部が早々に、その新オーナーさんを断っちゃったもので。それで、また新しい人が決まるまでずるずると。
――本部は店を潰すことなく建屋はそのまま、オーナーを入れ替えてアルバイトなども居抜きで継続させたわけですね。
ええ。3人いた古株のパートさんには、店長補佐の資格を取ってもらっていたんです。数年前に本部から、「契約の仕方が変わって、オーナー1人と資格保有のパートがいるなら契約更新できますよ」と言われました。それで、私が外れても大丈夫な体制を整えようと、パートさんに発注や面接の仕方までいっさいがっさいを教えたんです。
その矢先、うちの店の裏に、激安がウリのドラッグストアがオープンしました。今どきのドラッグストアって、食品や飲料も売っているでしょう。すごく人気で。
そうこうしているうちに最低賃金が上がって平日昼間も1000円を超えることになり、人件費が爆上がりしたので、私が抜けてパートさんを使いながら経営するのが難しくなったんです。それでとうとう夫も、これ以上コンビニ経営を続けるのは難しいと判断しました。
しかも、閉店したローソンの跡地には、また別のドラッグストアが建つみたいなんです。この辺りは激安ドラッグストアが次から次へとできていて。かつてコンビニが乱立したときのように、今度はドラッグストアが乱立しはじめている。これは、潰し合いが始まったなと思っています。
――地方の商圏で、小売業態の変化が起きているということですか?
そのとおり。この辺りの住民もかなり高齢化して、若い人が減って老人が増えているから、コンビニを経営していても「夜のお客さんが減ったなあ」と思っていたんです。
激安スーパー、激安ドラッグストアは夜の9時や10時に閉めても、お年寄りは困らないでしょう。コンビニじゃなくても別に大丈夫。しかも今は物価高で、年金もどうなるか分からないじゃないですか。みんな激安店に行きたがっています。
でも、コンビニオーナーを辞めた一番の決定打は、また別ですね。