「本当に菅首相は素直に首相を辞めるのだろうか。まさか、辞める代わりに解散するなどと言わないだろうか。
これまで15年間、菅首相をみてきた立場からすると、まだ信じられないのである」(週刊文春6月16日号)。
2週間前発売の「週刊文春」で私はこう書いた。不信任案決議前の代議士会での鳩山由紀夫前首相との約束を受けて、すべての新聞・テレビが、菅首相の退陣を確定的に報じていた。
だが、私は3つの理由でそんなに簡単に菅首相が辞めるとは思っていなかった。だからこそ、記事の文末にあえてこう書いたのである。そしてそれは、なかば的中しているようだ。
地盤・看板・カバン――
何一つ持たずに首相の座を射止めた男
わずか4人の小政党だった社民連出身の菅直人首相は、今の永田町において抜群の権力闘争の巧者といわざるを得ない。地盤・看板・カバンの3バンを何一つ持たずに首相の座を射止めた実力は、もっと注目されてもいいだろう。
その最後の仕上げともいうべき15年間、私は、菅首相を同じ政党の秘書、あるいは米紙の取材記者、そして民主党を取材するフリーランスジャーナリストとしてみてきた。
「菅? そんなに簡単に辞めないだろ」
かつての私のボスで、民主党結党時のメンバーのひとり、東京18区で菅直人氏と選挙で戦いもした鳩山邦夫氏は、自由報道協会の会見でこう語った。