東芝による半導体フラッシュメモリー事業の売却作業が難航する中、「新・日米連合」の構想が浮上している。その主体は、東芝と真っ向から対立する米ウエスタンデジタル(WD)。経営体力の弱った東芝に攻勢をかけており、入札交渉は混迷の度を増している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文、村井令二)
いよいよ強硬手段に打って出た。東芝の半導体新会社、東芝メモリの売却をめぐって、同事業の提携相手である米ウエスタンデジタル(WD)は米国時間14日、売却の入札手続き停止を求めて国際仲裁裁判所に申し立てを行ったのだ。WDは、東芝による一方的な事業売却は合弁契約に違反すると主張している。
一方、入札手続きは正当とする東芝は3日付の書簡で、WDと共同運営する四日市工場(三重県四日市市)のデータサーバへのWD社員のアクセスを米国時間15日に遮断すると警告した。泥沼の抗争に突入するかに見られたが、当初強気だった東芝は一転、16日に対抗措置の実施を見送った。
「契約上、事業売却にWDの同意を得る必要はない」と自信をみせていた東芝が「矛を収めた」背景には、これ以上の対立激化で売却手続きを遅らせることができないという弱みがある。この一方でWDのステーブ・ミリガン最高経営責任者は、10日に東芝の綱川智社長と会談したのに続き、経済産業省、産業革新機構、主力取引銀行幹部らを相次ぎ訪問し、東芝の「外堀」を埋め始めている。