ヤンキーの虎はチャレンジ精神が旺盛であり、かつ情報収集力に優れている。東京で流行しているものや、これから流行りそうなものを見つけて地元に持ち帰る「ミニタイムマシン経営」が得意なのだ(写真はイメージです)

要約者レビュー

『ヤンキーの虎――新・ジモト経済の支配者たち』
藤野英人
224ページ
東洋経済新報社
1400円(税別)

 本書『ヤンキーの虎――新・ジモト経済の支配者たち』は、地方経済の支配者「ヤンキーの虎」の実像を紹介するとともに、そのビジネス手法や地方経済、さらには日本経済の将来がどのようなものになるのか、政府の経済政策や投資家の分析などと絡めて明らかにするものである。

 大企業の経営者たちが小泉改革以降、失敗を恐れるがあまりチャレンジする姿勢を失い「選択と集中」にシフトした一方で、地方経済の雄たちには着実に成長していった。そこにはいくつかの共通点がある。まず、彼らは介護事業、携帯電話販売、コンビニのフランチャイジーなど、サービスや販売に関係する事業を中心に多角化展開する戦法をとっている。また、M&Aもさかんに行なう。さらに、地元のつながりをとても重んじる。

 地縁血縁を大切にする経営方針などは、一見すると一貫性がなく、非効率・非合理的であるかのように見受けられる。しかし、その成長の裏にある事業意欲が日本経済の今後を左右すると考える著者は、ヤンキーの虎のようにリスクを取り、自ら「動く人」が増えることを願っている。

 著者自身、投資家としてヤンキーの虎のような起業家たちを応援するのみならず、地方にて自ら事業を開始するなど、その行動力もいわゆる投資家の枠からはみ出しており、魅力にあふれている。

 都市部に先んじて少子高齢化の進む地方で、今どのようなことが起こっているのか。本書で紹介されている魅力的な経営者たちの視線の先になにがあるのか、巡らせてみてはいかがだろうか。 (山崎華恵)

本書の要点

(1)ヤンキーの虎の特徴は、若く、チャレンジ精神が豊富で、リスクテイカーであることだ。
(2)日本の有名大手企業の中にも、地方からはじまった会社が多く存在する。
(3)ヤンキーの虎が成功しているのは、新しいことに意欲的に挑戦する「動く人」だからである。
(4)日本人の8割は「動かない人」である。彼らは消費意欲が低く、将来に不安を抱え、積極的に努力をしない。こうした受動的な人間が今後、当事者意識をもち「動く人」になれるかどうかが、今後の日本経済を左右する。