そのためか、彼が行き着いた長寿の秘訣も、多角的で科学に裏打ちされたメソッドとなっている。『ロング・ゲーム』では食事法や睡眠の取り方から、ストレスの対処法、その人の体に合ったホルモンやサプリの選び方、果ては「長生きするための車の運転の仕方」まで伝授するという。

 日本でもいま、「100年人生」が実現した時のための新しい生き方を模索したリンダ・グラットンの『ライフ・シフト』(東洋経済新報社)が売れている。これに呼応する日本発の本が『東大が考える100歳までの人生設計 ヘルシーエイジング』(幻冬舎)あたりだろうか。

単なる長生きではない、本当の幸せとは?

 だが先日、映画『アデライン 100年目の恋』を観て考えてしまった。長生きしても体が年相応のヨボヨボだったらダメだろうし、若々しいまま100歳になっても人生を楽しめるのかしら?と。若いといっても主演女優のブレイク・ライヴリーみたいに美しくもないしね~、と。

 この映画でも前提になっているのが、主人公のアデラインが冷たい水中に落ちたことで、人間の体の染色体の先っちょにある「テロメア」が変化して不老不死になったという科学説で、本来老化とともに短くなるはずのテロメアを守るテロメラーゼの研究も盛んだ。

 2009年にノーベル医学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーンの『テロメア・エフェクト』(NHK出版)はアメリカでもベストセラーになったばかりだが、この分野では先駆者エド・パークのテロメアに関する本も企画されているし、ビル・アンドリュースがプロデュースするテロメアーゼ商品も既に日本に入ってきている。

 こうした研究が進んで人工的に不老不死が可能になったとして、「あなたはずっと生きていたいですか?」というのが次のテーマになるような気がする。名付けて「浦島問題」。

 映画のアデラインも生き返ってみたら自分が知っていた周りの人たちが年をとっていて、自分だけいつまでも若く、今の恋も相手だけがどんどん老いて死んでいくのが辛いという話だし。

 となるとやっぱり「周りも一緒に長生きするのが幸せ」、ということで、実はアメリカをはじめとする英語圏ではずっと、沖縄の人たちの生活に焦点を当てたロングセラーが何冊も出ている。「Okinawa Diet」「Okinawa Program」といえば、暖かい南国で幸せに生きるコミュニティーへのアメリカ人の憧れが感じられる本なのだ。