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スマートフォンの理想と現実

プロすら見誤る
“つながりにくいiPhone”に潜む
ケータイ業界の本当の課題

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第1回】 2011年6月29日
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世界でつながって東京でつながらないiPhone

 「あなたのiPhone、つながっていますか?」

 私の周囲のiPhoneユーザでは、こんな挨拶が日常化している。そこまで極端ではないにせよ、通信環境にストレスを感じていないiPhoneユーザは、国内では少数派なのではないか。

 つながらないiPhoneは、宝の持ち腐れ。確かに通信機能がなくても音楽やビデオを楽しむことはできるが、それではただのiPod touchに過ぎない。メールの読み書きやWebブラウジングができて、はじめてそのありがた味を感じる。

 通信回線提供者であるソフトバンクモバイル(以下SBM)も、彼らの通信環境の脆弱さを認識しており、先の2011年3月期のソフトバンク(以下SB)グループ決算発表会でも、今後2年間で1兆円程度の設備投資を行い、状況の改善を目指すと、孫正義社長自らが宣言している。

 ところで、この「つながる/つながらない」という状況は、なぜ生じるのだろう。基地局の数(の不足)や使っている周波数帯域(の割り当ての不利)というのは、SB自身が以前から課題として指摘してきた。しかし実際は、これ以外の様々な要因が複雑に絡み合って、移動体通信は形成されている。そしてその複雑さは、プロの中でも、しばしば見失われがちとなる。

 連載を始めるにあたって、まずはこの複雑さを改めて紐解いてみたい。

端末と基地局の問題

 ケータイがつながる――。至極当然と思われるこの状況は、様々な要素がすべて成立して、はじめて実現される。

 まずは、端末。iPhoneをはじめとして、すべての携帯電話端末は、当然ながら無線通信機器である。従って、端末の無線通信能力が低ければ、まずここで躓いてしまう。

 冒頭から引き合いに出しているiPhoneは、実はこの端末としての無線通信能力がやや劣る、という評価がある。現行機種のiPhone 4登場時には、端末の「握り方」によって通信状況が悪化するという指摘が数多く寄せられ、米国では大騒ぎとなった。

 またiPhoneといわゆるガラケー(旧来からの折りたたみ式国産端末)を、同じSBMの通信インフラで比べてみると、前者はつながらなくて後者はつながる、という結果が散見されるようだ。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/株式会社TNC 代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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