世界でつながって東京でつながらないiPhone

 「あなたのiPhone、つながっていますか?」

 私の周囲のiPhoneユーザでは、こんな挨拶が日常化している。そこまで極端ではないにせよ、通信環境にストレスを感じていないiPhoneユーザは、国内では少数派なのではないか。

 つながらないiPhoneは、宝の持ち腐れ。確かに通信機能がなくても音楽やビデオを楽しむことはできるが、それではただのiPod touchに過ぎない。メールの読み書きやWebブラウジングができて、はじめてそのありがた味を感じる。

 通信回線提供者であるソフトバンクモバイル(以下SBM)も、彼らの通信環境の脆弱さを認識しており、先の2011年3月期のソフトバンク(以下SB)グループ決算発表会でも、今後2年間で1兆円程度の設備投資を行い、状況の改善を目指すと、孫正義社長自らが宣言している。

 ところで、この「つながる/つながらない」という状況は、なぜ生じるのだろう。基地局の数(の不足)や使っている周波数帯域(の割り当ての不利)というのは、SB自身が以前から課題として指摘してきた。しかし実際は、これ以外の様々な要因が複雑に絡み合って、移動体通信は形成されている。そしてその複雑さは、プロの中でも、しばしば見失われがちとなる。

 連載を始めるにあたって、まずはこの複雑さを改めて紐解いてみたい。

端末と基地局の問題

 ケータイがつながる――。至極当然と思われるこの状況は、様々な要素がすべて成立して、はじめて実現される。

 まずは、端末。iPhoneをはじめとして、すべての携帯電話端末は、当然ながら無線通信機器である。従って、端末の無線通信能力が低ければ、まずここで躓いてしまう。

 冒頭から引き合いに出しているiPhoneは、実はこの端末としての無線通信能力がやや劣る、という評価がある。現行機種のiPhone 4登場時には、端末の「握り方」によって通信状況が悪化するという指摘が数多く寄せられ、米国では大騒ぎとなった。

 またiPhoneといわゆるガラケー(旧来からの折りたたみ式国産端末)を、同じSBMの通信インフラで比べてみると、前者はつながらなくて後者はつながる、という結果が散見されるようだ。