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飯田哲也の新・エネルギー原論
【第5回】 2011年6月30日
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飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長]

議論百出する発送電分離の要所は
送電網の全国一体化による安定供給とイノベーション

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東京電力の賠償原資を確保する、という文脈で「発電と送配電を分離すべき」との議論が再燃している。だが、送配電だけを先行して売却すると賠償スキームや安定供給の混乱もありうる。理想型は、安定供給部門を一体とした一時国有化である。その上で送電事業は、東電から分離させることはもちろん、他電力会社の送電部門も統合して、全国で一体運営を目指すべきだ。すると、地域間の電力融通や自然エネルギーの拡大が可能となる。

公共性を求められる送電業務
既存の電力会社には任せられない

 発送電分離は必ず実現させるべきだ。その根拠は、「規制緩和」や「自由化」ではなく、送電線の“公共性”にある。

 送電線は、高速道路と同じように、利用者すべてに等しく開かれていなければならない。必ずしも国営である必要はない(むしろ国営でない方がよい)が、“公共的に”使えなければならない。それに対して、発電や売電は利潤を追求するビジネスである。「公共的なサービスを提供する存在」と「営利を追求する存在」は、そもそも別の主体であるべきだ。

 ここで、一枚の絵が思い出される。ニューヨークの空を、配電線がクモの巣のように覆った様子が描かれている。その昔、電気を売りたい人が自分でおのおのに配電線を引いた時代の様子だ。

 そうした「電気を売りたい人が送配電をそれぞれに設置する」という非効率的さを避けるために、日本でも海外でも、かつては一定規模の地域独占が認められた。一つの電力会社が一定の地域を独占し、発電・送電・配電までを一体として供給した方が「合理的」だったからだ。日本でも第二次世界大戦後に、10地域をそれぞれの電力会社が独占する現在の体制ができあがった。

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飯田哲也 [環境エネルギー政策研究所所長]

1959年、山口県生。京都大学原子核工学専攻修了。東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。大手鉄鋼メーカー、電力関連研究機関で原子力の研究開発に従事した後に退職。現在、非営利の研究機関の代表を務めつつ、複数の環境NGOを主宰し、科学者でもある。自然エネルギー政策では国内外で第一人者として知られ、政策提言と積極的な活動や発言により、日本政府および東京都など地方自治体のエネルギー政策に影響を与えるとともに、国際的にも豊富なネットワークを持つ。主著に『北欧のエネルギーデモクラシー』、共著に『グリーン・ニューディール―環境投資は世界経済を救えるか』(NHK出版)、『日本版グリーン革命で 経済・雇用を立て直す』(洋泉社新書)、『自然エネルギー市場』(築地書館)など。5月に『今こそ、エネルギーシフト 原発と自然エネルギーと私達の暮らし』(岩波ブックレット/共著)を刊行予定


飯田哲也の新・エネルギー原論

東京電力・福島第一原子力発電所の事故は、私たちに様々な問題を提起した。夏場の電力不足への対応という短期的課題だけでなく、原発存続の是非や、電力の供給体制のあり方といった中長期的な政策に及ぶ議論が一気に噴出している。エネルギー政策の第一人者として知られる飯田哲也・環境エネルギー政策研究所所長が、問題の本質をひもとき、合理的な解決策を探求する。

「飯田哲也の新・エネルギー原論」

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